金田正一監督、根本陸夫監督、大島康徳監督、仰木彬監督(いずれも故人)など、錚々たる顔ぶれに対して、日本最多記録となる17回の退場宣告を行った元名物審判・山崎夏生氏。その山崎氏が、巨人からMLBに渡って活躍した元プロ野球選手・上原浩治氏のYouTubeチャンネル〈上原浩治の雑談魂〉の11月19日投稿回に出演した。
それによると、山崎氏は、子供の頃には唯一テレビで放送されていた、巨人戦をもっぱら観戦していたそうで、野球界に入り、長嶋茂雄氏や王貞治氏と初めて会った時には「涙が出そうだった、神様に会った気がして」とのことである。
また、かつては、「アンパイア~!」「山崎~!」などと、ベンチに座りながら怒鳴りつける監督もいたところが、ソフトバンク時代の王監督は、どんなに年下の審判でも必ず近くまで歩み寄り「さん付け」で呼んでいたそうで、「とびきり紳士だった」と振り返る。
ところが、神様と崇め、紳士と慕ったそんな王監督に、あわや「退場宣告」…といった過去エピソードもあったという。
それは、山崎氏が球審を務めた試合、ノーアウト1塁でエンドランのかかった場面でのこと。ソフトバンクのピッチャーの投球を巡り、相手バッターの避けた左手側面に当たったと「死球」と、山崎氏はジャッジした。
しかし、王監督は「三振」だと主張し、「エンドラン掛かってるんだよ。打ちに行くに決まってるじゃないか!…キミは野球やったことないのか!」と抗議したのだ。
すると、山崎氏は「監督もエンドランやったことないでしょ!」と、思わず強気に言い返したという。「10分揉めちゃった、申し訳ないことしちゃった…」と苦笑交じりに白い歯を見せて振り返った山崎氏だった。
王監督との「男気」と山崎氏の「男気」のぶつかり合いは、ビデオ判定の無かった時代ならではの醍醐味だろう。昭和を懐かしく想起させてくれる証言だ。
(ユーチューブライター・所ひで)