異例も異例だった。芦田愛菜主演のドラマ「明日、ママがいない」(水曜10時、日本テレビ系)が放映3回目にして「全8社のスポンサーが撤退」という憂き目にあったのである。
そんな非常事態を招いたのは熊本の慈恵病院が「放送中止」を申し入れたことから。これに対し日テレ側は「放送継続」を改めて宣言したが、スポンサー企業の賛同は得られなかったようだ。
さて、日テレにとって21世紀に入ってから、こうした事態は初めてではない。05年の夏にオンエアされた天海祐希主演の「女王の教室」は、最終回が25%を超えるほど好調な数字だったが、天海扮する小学校教師の恐怖の管理教育ぶりにPTAから非難が殺到。ドラマ自体はギャラクシー賞などを受賞する高評価だったが、やはり、スポンサーは一般の声を気にしてしまう。結果、撤退こそなかったものの、いくつもの社が提供クレジットを外すという“緊急避難”が見られた。
同じ土曜9時の枠では、09年1月に始まった松山ケンイチ主演の「銭ゲバ」もある。ジョージ秋山の同名コミックをドラマ化したことで話題になったが、主人公の「金のためなら何でもするズラ」という考えは、小学生にして殺人を犯すという残酷な描写につながる。平均視聴率は1ケタ台に低迷したが、それ以上に痛手だったのは6社のスポンサーのうち5社が提供クレジットを外したこと。こちらも番組の評価は高かったものの、やはり圧力には勝てなかった。
3番組ともに共通するのは、タブーを恐れずに「ドラマとしての表現」を突き進んだ点だが、今の日本の民衆はゲームのごとく“炎上”させてしまうようだ──。