新年早々、「アイ・アム・冒険少年」(TBS系)の過剰演出報道で、テレビ番組のヤラセ問題が再びクローズアップされている。振り返れば、バラエティー番組の歴史にはヤラセが付きまとう。両者は長きにわたって密接な関係を築いてきたのだ。
同番組はタレントが自力で無人島から脱出する「脱出島」企画を巡り、あばれる君(35)が独力で作ったはずの脱出用のイカダは、実はほぼスタッフが作っていたなどの疑惑が「文春オンライン」に報じられた。
あばれる君は自身のインスタグラムで〈お騒がせしてすみませんでした〉と謝罪したが、TBSは番組公式サイトで〈時にはスタッフと力を合わせながら、全力で頑張る出演者の勇姿を楽しんでいただくアドベンチャーバラエティです〉と、開き直りとも取れる異例の説明文を掲載して波紋を広げている。
ヤラセ事情に詳しいライターの張本茂雄氏が語る。
「一昨年、織田無道さんが『クイズ番組は解答を渡されていた』とテレビのヤラセを暴露してこの世を去りましたが、テレビ界の秘密は死に際でないと本当のことが言えないんだなと思いましたね。『冒険少年』で話題のTBSは『消えた天才』や『クレイジージャーニー』『さんまのSUPERからくりTV』の『ご長寿早押しクイズ』など、ヤラセの伝統がある局。むしろヤラセを悪いと思っていないのでしょう。その理由としては、買収疑惑がまことしやかに報じられる、本丸の『輝く!日本レコード大賞』があるからではないでしょうか」
同じく無人島を舞台にした企画がヒットした「いきなり!黄金伝説。」(テレビ朝日系)でも、ヤラセが露呈した。
12年6月放送の便利屋に密着した企画で、舞台となったゴミ部屋が捏造されたものであることを、便利屋の取締役を務めていたタレント・坂本一生(50)が週刊誌で暴露。坂本は同社が番組企画で関わったNHK「ドキュメント72時間」やTBS「キスマイフェイク」、読売テレビ「す・またん!」のヤラセも連続告発してみせた。
バラエティー番組を手掛ける放送作家が振り返る。
「坂本の告発を受けて同社の運営会社の社長は『キスマイフェイク』以外の番組の疑惑を否定しましたが、テレビ各局に至っては、ヤラセ報道をほとんどスルー。番組サイドが依頼した仕込みなのか、同社の“単独犯行”なのかは曖昧にしたまま無視する形でした」
18年5月、「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ系)で、宮川大輔(49)が自転車に乗り、球状の障害物をよけながら水上にかけられた橋を渡るラオスの「橋祭り」に挑戦する様子を放送した際、そんな祭りは実在しないことが発覚。タイで収録された「カリフラワー祭り」もでっち上げであることが判明し、当時の同局・大久保好男社長が「疑念を生じさせた」と謝罪した。ところが、番組自体はその後も継続している。
「日テレサイドは『どちらの祭りも現地のコーディネーターが番組のために用意したもので、制作スタッフが意図的に作り上げたわけではない』と釈明しましたが、常識的に番組専属ではないコーディネーターが単独で祭りを作り上げるとは思えません。事前にロケの段取り交渉などをしていた番組スタッフは、多少なりとも把握していたはずですが‥‥」(番組制作会社スタッフ)