真実を伝えるべき、報道やドキュメンタリー番組にも、現実は視聴率欲しさの暴走がまかり通ってきた歴史があった。
昨年12月放送のNHKBS1のドキュメンタリー「河瀬直美が見つめた東京五輪」で、〈五輪反対デモに参加している〉人物が〈実はお金をもらって動員されている〉という事実と異なる字幕を番組スタッフが付けた問題が騒動となっている。張本氏が憤る。
「今回、問題になっているのはドキュメンタリーですからね。一切のヤラセはNGでしょう。NHKは明らかに確信犯。19年に海外向けサービス『NHKワールド JAPAN』で放送した『レンタル家族』をテーマにしたドキュメンタリー番組『Inside Lens』でも、客と称した人が実は仕込みのスタッフだったこともありました」
NHKといえば、過去にも「プロジェクトX~挑戦者たち~」にて、番組内で取り上げた高校を過剰に荒廃した学校のように表現。「クローズアップ現代」ではNHK大阪放送局の記者が大阪府在住の50代の男性に対し「多重債務者が出家して別人になりすまし、融資を受ける『出家詐欺』のブローカー役になって債務者とやりとりする演技をしてほしい」と依頼していたことが発覚、物議を醸したこともあった。
「仕込みが雑なのはNHKの伝統でしょうね。ヤラセ慣れしてないから」(張本氏)
もっとも、民放キー局も負けてはいない。人気ドキュメンタリー番組に、視聴者からブーイングが巻き起こった過去があるのだ。先の放送作家が回顧する。
「30年以上前の番組『素敵にドキュメント』(テレ朝系)では、素人女性の『性』をテーマにした企画で女性タレントを仕込みに使っていたことが発覚。司会を務めていた逸見政孝さんが『テレビマン、特にドキュメント番組の制作者が最もやってはいけないことをやったのは失格です。私自身、1人の放送人として我慢できません』などと激怒し、そのまま番組を降板したことは、今でも多くの人の記憶に刻まれているのではないでしょうか。現在も放送されている長寿番組『ザ・ノンフィクション』(フジ系)でも、オカマのマキさんとオナベのジョンさん夫婦の生活を追う人気シリーズで、ケンカなどほとんどしない実像を曲解して過剰演出。憤った本人たちが告発して話題になりました」