最近、歩く速度が遅くなり転ぶことも多くなった──。もしかしたら「サルコぺニア」かもしれない。聞き慣れない言葉だが、加齢によって筋肉量が減少し、筋力や運動機能が低下する状態を指す。
老化による筋肉の減少は転倒などのリスクにもつながる。2016年に国際疾病分類に登録され、疾患に位置づけられたこともあり、注目が高まっている。
日本サルコペニア・フレイル学会で推奨している診断基準は、筋肉の力、機能、量の3つの指標で判定するというものだ。
簡単に自分の筋肉量を把握できる診断方法は、ふくらはぎの周囲の長さを測る「指輪っかテスト」。まず、両手の親指と人差し指で輪を作る。次に、利き足でないふくらはぎの一番太い部分に、この輪を当てる。作った輪よりも小さく隙間ができれば「サルコペニア」の可能性が高い。
筋肉は合成と分解を繰り返している。若い時は合成と分解の量が均一に保たれているが、加齢に伴い、筋肉量が減りやすくなってくる。そのためには、食事と運動で筋肉の量と機能低下を予防することが大切だ。
積極的に摂取したいのが必須アミノ酸「BCAA」だ。運動時の筋肉でエネルギー源となるバリン、ロイシン、イソロイシンという3つの必須アミノ酸の総称で、筋肉を作ったり修復したりする働きをしてくれる。「BCAA」が多く含まれる食品は、マグロやカツオなどの赤身魚、レバー、卵、大豆製品、牛乳だ。
運動は、筋肉に負荷をかける「レジスタンス運動」がオススメだ。椅子を使ったスクワットで、両足を肩幅に開き、椅子からゆっくりと立ち上がり、ゆっくりと腰を下ろすという動きを10回ほど繰り返す。膝に負担をかけないため、股関節を曲げるのがポイントだ。
他に腕立て伏せや腹筋、椅子の背に手を添えて行う「踵上げ」なども有効とされている。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。