1980年代、昭和終盤の「巨人‐阪神戦」を彩った巨人の江川卓氏と阪神の掛布雅之氏だが、実は江川氏の「お前とオレの勝負が1球で決着ついたらファンは白けるよね」との提案に、「じゃあオレ、1球目は見逃す…」と掛布氏が応じるといった取り決めが成されていたことが掛布氏の口から明かされたのは、お笑いタレント・松村邦洋のYouTubeチャンネル〈松村邦洋のタメにならないチャンネル〉、2020年10月29日付け投稿回でのこと。
1球目に見逃してストライクを取られれば、当然打者が不利に思えるのだが、江川氏のYouTubeチャンネル〈江川卓のたかされ【江川卓 公式チャンネル】〉の、2月9日付け投稿回に掛布氏が出演した際、粋なやり取りが成されていたことが明かされている。
その取り決め以来、掛布氏が1球目を打つことは無く、江川氏は独特の放物線を描くみごとなカーブ…ではなく、緩いカーブでストライクを取っていたそうだ。
「あれを狙って打ったら5割は打てるね」と、冗談めかして口にした掛布氏に、「(約束を)本当に守るかな?…と思って」と信用できる人間かどうか試していたのだと口にし、「ずーっと守った!」と掛布氏に感心した様子の江川氏。
そんな掛布氏の心意気に、江川氏も応えていたようで、掛布氏は「“行くぞ”って合図してくれるね。オレ、それはわかった。振りかぶった時に、行くぞ、みたいな…」
つまり、江川氏がストライクゾーンにストレートを投げ込む時には、「阿吽の呼吸」のごとく、掛布氏に目に見えぬ合図を送っていたのだというのだ。
結果、掛布氏は江川氏から14本塁打を放っている。掛布氏は、広島の山本浩二氏に並び江川氏にとって最多被本塁打者なのだ。不利を買って出た、江川氏の男気が感じられる何とも味わい深いトークであった。
(ユーチューブライター・所ひで)