1996年は、日本プロ野球の巨人にとって奇跡的な年だった。首位を走る広島カープに最大11.5ゲーム差に離されたが、これを大逆転してリーグ優勝。当時の長嶋茂雄監督による「メークドラマ」といった造語も生み出された。この年、2人のルーキーの存在が大きかった。仁志敏久氏と清水隆行氏である。仁志氏は114試合に出場、7本塁打、109安打の活躍。清水氏も新人王こそ仁志氏に譲ったものの、107試合に出場、11本塁打、84安打と大活躍だった。
そんな清水氏が、お笑いタレントのレッド吉田らが司会を務めるYouTubeチャンネル〈こちら野球放送席〉に出演。96年の開幕1軍デビューは「運は間違いなくあったと思うんですよ」と「運」を強調した。4月10日付け〈【清水隆行】巨人次世代のスター候補は誰だ!【秋広・松原・平内・横川】〉と題した投稿回で、「このオープン戦が終わったら何人か落ちるっていうところにボク入ってたらしいんですよね」と、振り返る清水氏。しかし、その試合で「たまたまホームラン打ったんですよ。これが内野安打とかだったら予定通り落ちてたかもしれないけど…」と踏みとどまり、さらにオープン戦終盤、落合博満氏など主力選手が加わってくる中、スタメン予定だった外国人選手がケガで離脱。代わりに出場した清水氏が、当時「オリエント・エクスプレス」と称された西武ライオンズの郭泰源氏からホームランを放ち、開幕1軍が決まったというのだ。
「運も実力のうち」というが、若手の「運」が積み重なった結果、たどりついたのが「メークドラマ」だったのではないかとしみじみ思う興味深い回だった。
(ユーチューブライター・所ひで)