橋下氏の突発辞職を批判しているのは、何もアンチ橋下派だけではない。
08年に橋下氏が政界に入る契機となった府知事選。その選挙をともに戦った自民党衆院議員の中山泰秀氏は、自身のブログで橋下氏を次のように痛烈に批判した。
〈民主党への政権交代が明らかな状況になってくると、あなたはすかさず選挙応援を受けた『自民党』『公明党』よりも『鳩山民主党』への支持を表明し、鳩山由紀夫さんに陰りがみえ都合悪くなると、知事公館に小沢一郎さんを招き入れ握手までし、今度は(中略)みんなの党・渡辺喜美さんに近づき‥‥〉
これは、橋下氏が潮目を読み、政界の海で庇護を求めて泳ぐ姿。公明党に人の道を説ける立場にはないと言わんばかりだ。むろん、処世術と言えばそれまでだが、一方では〈『常に利用出来る人間』以外は裏切り〉続けている。それこそ橋下氏の本性なのではないのかと問うている。このブログの最後に、一人の大阪市民として中山氏は〈馬鹿なことはやめて下さい〉と橋下氏に呼びかけているのだ。
こうした橋下氏のコロコロと変わる言動は、反橋下派の人々をなおさら幻惑させている。
アンチ派の代表格として知られる帝塚山学院大学教授の薬師院仁志氏はこう話す。
「11年の統一地方選では、大阪と堺の市議選で維新の会が過半数を取れなかった。その際、橋下さんは『都構想はいったん白紙にし、他党と話し合いながら進めていきたい』と話しています。白紙だと言ったり、何が何でも15年4月に大阪都移行だと言ってみたり‥‥。橋下さんの言葉には一貫性がない。12年に市民団体が原発の是非を巡って住民投票条例制定を求めた時は、『原発の是非だけを問うなら5億円かけてやる価値はない』と言い放っている。ところが、大阪都構想の住民投票はまったく譲らず、6億円も費やして市長選を行うというのだから、『もういいかげんやめてくれ』という思いしかないです」
かつて、薬師院氏は討論番組「朝まで生テレビ」で橋下氏と対峙した。放送後は橋下支持層から大学に猛烈な抗議を受けたという。それでも、薬師院氏は言説を曲げることはなかった。
「大阪市民にしてみれば、橋下氏の言動は自転車操業の連続で地獄への道を歩んでいるわけですが、ところが、このムチャな運転でもなかなかコケない。橋下人気が低下しているとはいえ、タレント人気はいまだ健在で、今回の出直し選挙も自分への人気投票で乗り越えようとする算段なのでしょう。もはや、橋下さんがどうこういうという感覚を通り越して、暴走がやんだあとのことが心配です。すでに市政はメチャクチャにされてしまいましたからね‥‥」
橋下氏は自身のツイッターでテレビのコメンテーターは「行政実務経験がないからダメ」と批判している。ナニワの街がどうなろうと、橋下氏は立派なコメンテーターになれることだけは間違いないだろう。