「都構想の設計図を書かせてほしい」。言語明瞭だが訳のわからん主張を繰り返し、ナニワの市長が「出直し選挙」に打って出た。しかし、議会からは総スカン、市民もアッケにとられるばかり。もはや“維新旋風”も末期の様相なのだ。仇敵たちも“最期の別れ”を惜しむべく、痛烈な“弔辞”を贈る始末で‥‥。
「戦う理由も大義もない。いったい何のための出直しなのか。そんな勝手気ままな選挙に、6億円もの血税が注がれる。多くの予算をカットしておいて、自分のワガママに税金を使うのはかまわないというのであれば、これは監査請求でも受ければいいんです」
こう話すのは、弁護士の樺島正法氏。橋下徹大阪市長(44)が弁護士時代に初めて勤めた法律事務所の所長である。言うなれば、弁護士としての“父親”に当たる。そんな樺島氏は、2度にわたり弟子に対し懲戒請求を突きつけた。橋下氏が光市母子殺害事件弁護団への懲戒請求発言時と慰安婦発言があった時にである。
手ごわい“敵”である樺島氏も、橋下氏には憐れみさえ感じているようだ。
「テレビや新聞で顔を見るだけだが、すっかり生気をなくしている。何もかも嫌になって、ただただ辞めたいだけなのではないかとさえ思えてきます。そもそも、選挙結果で都構想に反対している議会の会派構成が変わるわけではないのですからね」
もっとも、こうした批判を受けることは百も承知のうえだったのだろう。2月3日の出直し選挙を正式に表明した会見で、橋下氏はこう話している。
「大阪都構想の是非を問う選挙ではない。都構想の設計図を作るために、民意で後押しをしてほしい」
都構想に賛成している人々も肩透かしを食らったかのような話ではないか。
そもそも、今回の橋下氏の市長辞任表明は、都構想の制度設計を進める法定協議会が発端である。新設する特別区の区割り案を「4案から1案にしぼって議論したい」と橋下氏が提案した。
ところが、自民、民主、共産の議会各派が反対。しかも、12年の衆院選で「日本維新の会」と選挙協力した公明党までもが反対に回ったことで、橋下氏はブチ切れた。
「約束して議席欲しさに得るだけ得て、(都構想に協力しないのは)人の道に反する。絶対に許せない」
会見でも公明党への不満をまくしたてた橋下氏だが、翌2月4日には公明党“口撃”を一度収める。そして、しばらく鳴りを潜めていたツイッターで、連続的につぶやきを発し持論を展開したのだ。
要約すると、こういうことになる。これまで都構想は何段階ものステップを踏んできた。そして、残すところ、あと3つのステップをクリアするばかりとなった。それは、法定協議会の同意→市議会の同意→住民投票での同意である。議会構成は次なるステップであり、まずは法定協議会をクリアするための出直し選挙に打って出る。法定協議会で橋下氏の案を強引に通すことも法的には問題ないが、それでは独裁になってしまうので選挙をするというのだ。
◆アサヒ芸能2/10発売(2/20号)より