ロシアのウクライナ侵攻と大虐殺における「新展開」として懸念されているのが、生物兵器の使用である。日に日に現実的になっているといい、ロシア事情に詳しい軍事アナリストは、
「ロシアが開発している生物兵器は数種類あると言われています。炭疽菌とボツリヌス、ペスト、エボラウイルス、マールブルク熱、そして天然痘です」
その中でアメリカが警戒するのは天然痘だ。天然痘は1980年に世界保健機構(WHO)が撲滅宣言を出し、人類が初めて制圧した殺人ウイルスとして知られる。医療ジャーナリストが言う。
「研究目的のため、WHOが指定するアメリカ疾病予防管理センターとロシア国立ウイルス学・生物工学研究センターの2施設に天然痘ウイルスは保管されており、ソ連が崩壊した際には、ソ連の研究所から持ち出されたと言われます」
想像したくもないが、もしロシアが天然痘やエボラといった殺人ウイルス兵器を用いれば、ウクライナにとどまらず、瞬く間に世界中に広まることになろう。
そこで生死を分けるのが、肩に残る瘢痕だ。
「日本では1976年まで天然痘ワクチン接種を行っており、2006年に発表された論文では、ワクチン接種を受けた現在46歳以上の日本人の8割が天然痘の抗体を持っていることが判明しました」(前出・医療ジャーナリスト)
日本国内で備蓄している天然痘ワクチンは、250万人分。45歳以下の全ての国民に接種するには、あまりに少ない。
そこで厚生労働省の審議会は4月15日、ワクチンや薬の研究開発を加速させるために新たに指定する「重点感染症」の暫定リストをまとめた。選ばれたのは新型コロナウイルス感染症やエボラ出血熱、ペスト、狂犬病、ボツリヌス、天然痘…。お気付きだろう。これら「重点感染症」とロシアの生物兵器はほぼ一致するのだ。
我々の知らない間にリアルバイオハザード(生物災害)はすぐそこまで忍び寄っている──。