「メタボリックシンドローム(通称・メタボ)」は、最近まで体に悪いイメージが強かった。ところが近年、健康寿命を縮めない説が一般的な認識となってきた。
驚くべきは、それだけではない。高齢者については、メタボよりやせている人のほうが要介護率の割合が高いこともわかってきているのだ。
メタボとは、内臓肥満に高血圧や高血糖、脂質代謝異常が組み合わさることにより動脈硬化を悪化させ、心臓病、脳卒中などになりやすい状態を指す。
文部科学省の研究班が65~79歳の高齢者を11年間追跡調査した「高齢者の死亡リスクとBMI(体格指数)の関係」によると、男性はBMI27.5~29.9、女性はBMI23.0~24.9の時に、一番死亡リスクが低い研究結果が出された。これは普通体重~軽度肥満の指数である。
他にも入院から回復するまでの研究データもある。在宅高齢者の緊急入院する原因の1位は「肺炎」、2位は「骨折」によるものが多い。しかし、やせた高齢者は、肺炎や骨折が原因で入院すると体力や筋力が落ちて寝たきりになることが多いが、太ったメタボの高齢者は、体力や筋力があまり落ちずに回復できるケースが多いことが判明した。
つまり、高齢者はメタボよりも「低栄養」と「虚弱(フレイル)」により健康寿命を脅かす可能性が高いのだ。ちなみに「虚弱(フレイル)」とは、要介護になる危険性が身体や脳の衰えを指す。
「低栄養」と「フレイル」を予防すするためには、タンパク質の摂取が重要だ。これが不足すると、貧血や免疫力の低下が起き、筋肉量も減っていくからだ。まずは、小太りの体型を目指して卵や魚、肉、乳製品などのタンパク質や、オリーブオイルなどの脂質をしっかり摂る習慣が大切だ。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。