冬に多発する「脳出血」。脳の血管から出血し、血液のかたまりが脳細胞を損傷させてしまうことで引き起こされる。症状の程度はさまざまだ。軽いしびれを感じたりする軽度から、手足などに障害が残ってしまったり、最悪の場合、命を落とす危険性もある。
「脳出血は高血圧の人に多い」と思い込んでいる人も多いが、これは間違い。近年では、血圧が高くないのに発症する「アミロイドアンギオパチー」が増えている。聞き慣れない言葉だが、タンパク質のアミロイド(ゴミのようなタンパク質と考えてよい)が脳内に蓄積されることが原因で、脳動脈が脆くなり脳出血を発症しやすくなる。特に高齢者で起こりやすいと言われるが、この「アミロイドアンギオパチー」の蓄積は脳出血に加え、認知症の原因の一つとも。もともと認知症のある人が脳出血を起こしたり、脳出血をきっかけに認知症が発症したりするからだ。
近年、高齢者に多く注目されている病気だが、残念ながら「アミロイドアンギオパチー」に対する治療薬は今のところないため、内科的治療を中心に行うことになる。認知症も発症しているとアルツハイマー病や血管性認知症の要因と関連するため、それらの病気に対する治療を行うのだ。
この「アミロイドアンギオパチー」は加齢とともに脳内にたまってくるので、いかにため込まないかが予防の重要なポイントとなってくる。
まずは、糖分、油分、塩分、アルコールの摂取を控えること。体内にこれらが蓄積されると、体の細胞から徐々に水分が減少し、代謝機能が悪化し、ゴミタンパクがたまりやすいと考えられているためだ。
高血圧でないからといって、油断は禁物。60歳以上になったらリスクが高まるため、食生活には注意したい。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。