実は、ミスターの「好き」と「嫌い」の境界線は実力だけでは測れない。華のある「スター性」も贔屓となる要素の一つ。その最たる存在が定岡正二氏(65)だった。
「後にも先にも、長嶋家の長男のような厚遇を受けたのは定岡ただ1人ですよ。甲子園でフィーバーした人気ぶりを買われていましたからね。実力が伴わないのに1軍に帯同する特別扱いを受けた時期もあっただけに、チームメイトは嫉妬してましたよ」(角氏)
とかく甲子園のスター選手に熱を入れる傾向があるようで、
「06年の夏に“ハンカチ王子”としてブレイクした斎藤佑樹(34)、18年に“金農旋風”を巻き起こした吉田輝星(21)もミスターのお気に入りでした。ドラフトでも指名するよう球団に提言していたほどです」(球界関係者)
一方、エリートではなく燃えたぎる雑草魂に満ちた選手たちも、一目置いて重宝がられた。
「西本聖(65)は頼りにされてましたよ。直球が140キロ出るか出ないかで、ボール自体はミスター好みではありませんでしたが、打者に向かって投げるシュートは闘争心の塊でした。野手では、中畑清さん(68)が威勢の良さでズバ抜けていた。厳しい“鬼ノック”の最中に『このクソ長嶋、バカヤロー!』なんて言うもんだから、ミスターも『おぉ~キヨシ、ホラ、これはどうだぁ』なんてレスポンス。しばしば、中畑さんをイジることでチームを活気づけていました」(角氏)
反対に、自らラブコールを送っておきながら、熱が冷めたらほったらかしにするのもミスターの流儀か‥‥。
「第2次監督時代に“欲しい欲しい病”と揶揄されたFA補強を繰り返してきました。落合博満(68)や広澤克実(60)ら長距離砲を次々獲得しましたが、新しい選手を獲得するたびに古い外様に対するミスターの関心は薄れていくのが常。囲み取材の場で名前を出しても、スルーされるほどでした。ちなみに、清原和博(54)の場合は、不遜な練習態度に呆れて徐々に興味を失っていったようです」(スポーツ紙デスク)
そんなミスターがジェラシーをメラメラ燃やす、腹心の元部下がいる。監督としての通算勝利数で抜かれた原辰徳監督(63)に対しては、もはや好き嫌いではなくムキ出しのライバル心を隠し切れない様子なのだ。
「監督とヘッドコーチの師弟関係はありましたが、指導者としては名実ともに原監督のほうが上を行った。負けず嫌いのミスターも、ただ黙って見てるだけでは気が済みません。昨季、不調に陥った丸佳浩(33)や中田翔(33)を指導するために2軍施設を訪れたのも、世間へのアピールを多分に含んでいる。残念ながら、ミスターの指導は今の選手たちにはチンプンカンプンで役に立たないようですが‥‥」(スポーツ紙デスク)
ミスターから褒められるのは、選手にとっては最高の栄誉。もっとも、本人にとっては今でも「長嶋茂雄」がナンバーワンなのだろうが‥‥。