綾瀬はるか主演の月9ドラマ「元彼の遺言状」(フジテレビ系)が、6月20日に最終回を迎えた。流行りのリーガルミステリードラマとあって前評判もかなり高かったのに、なぜ盛り上がらなかったのか。
「大きな理由のひとつは、脚本かと思います」
ドラマライターはそう前置きした上で、次のように分析した。
「ドラマ好きであってもリアルタイムではなく、見逃し配信やサブスク、録画で一気に見る。しかも倍速で…。しかし、携帯やタブレット画像のシーンは一度止めてじっくり見る。そんなふうに、視聴スタイルは過渡期を迎えています。『元彼の遺言状』は序章の1~2話で、敏腕弁護士・剣持麗子(綾瀬)の元彼である森川栄治(生田斗真)の死によって展開される、遺言状を巡っての殺人事件があっさりと解決。新川帆立氏による同名小説が、ドラマ約10話分にわたって展開されるだろうと予測していた視聴者は、この時点でかなり面食らったはずです」
さらに3話以降の、ほぼ1話完結で毎話スッキリ…に比べ、二宮和也主演の日曜劇場「マイファミリー」(TBS系)は話の展開がスピーディーで、昔の事件など様々な要素が絡みつつ、毎話が次への伏線となるようなストーリーだった。
「つまりは、そうしたものが好まれるのかもしれません。剣持(綾瀬)のバディ役、篠田(大泉洋)の無実を晴らすまでの毎話の伏線も、あまりドキドキしませんでしたね」(前出・ドラマライター)
また、綾瀬の演技も生かしきれていなかった、と話すのは、民放局ドラマ制作スタッフである。
「彼女の魅力のひとつに『ギャップで魅せる』というものがありますね。『義母と娘のブルース』では、バリキャリなのに家事はサッパリ。『天国と地獄』では男と女の演じ分け。『奥様は、取り扱い注意』では専業主婦及び特殊工作員として、アクションシーンでの静と動の対比がありました。視聴者は、守銭奴で高飛車で仕事のできる完璧な弁護士の綾瀬が、酒を飲んでクダを巻くとか、自宅ではもじゃもじゃ頭でダラダラするとか、彼女の爆バストを想起させる衣装や浴室シーンなど、人間くさい『弱点』や『隙』も見たかったのだと思いますね」
一方で、謎解きの緩急をつけるためか綾瀬の大食いシーンが毎話出てきたが、
「テレビ東京系の飯テロドラマに慣れてしまった視聴者にとって、黙々と食べ続ける彼女を見て『美味しそう』と素直に感じた人は少なかったでしょう」(前出・ドラマライター)
四十路が近づく綾瀬にとって、好感度を上げやすい「王道のラブコメ」での主演は難しくなってきている。
現在進行形の色恋抜きの作品を選んだことは、今後の彼女の方向性を探る、という意味では挑戦に値するドラマだったかもしれないのだが…。
(島花鈴)