確定診断が出た後の治療法はどうなるのか。
K先生が根治を目指す場合と、根治が手遅れで緩和ケアを行う場合について説明してくれた。
根治を目指すなら、外科的な手術を行う。ジュテの場合は、お腹の中にあるシコリと肺に転移してできたシコリを取り除く手術を行うことになる。うまくいったら放射線治療や抗ガン剤治療で完治を目指す。
緩和ケアは対処療法だ。例えば、通過障害や疼痛、苦しさを鎮痛剤で和らげる。または便が出ないとか食べない、吐く場合のケアだ。
人のガン治療と全く変わらない。猫や動物の治療法は、ここまで進化しているのか。いや、以前からそうだったのかもしれない。でも、すごいことになっていると、理解することができた。
この時、ふと頭に浮かんだのは、治療にいくらお金がかかるのかということだ。飼っている猫は3匹とも医療保険に加入している。おそらくガン治療は保険の対象だが、どれくらいの金額になるのかは知りたいところ。手術した場合、保険が効くか、手術代はどれくらいかを、K先生に聞いてみた。
「(保険に)入っていますか。それはよかったです。おそらく対象だと思います。治療する内容によって大きく異なるから、金額はなんともいえないけど」
今後の治療の流れはというと、ガン細胞があることで好中球が増えて炎症を起こしているので、それを抗生剤、抗炎症剤で抑える。痛みがあるなら、鎮痛剤を投与する。ここまではS動物病院にお願いすることができるが、同時に確定診断のために、検査する病院を紹介してもらう必要がある。
「近い病院の方がジュテの負担が少ないし、入院した時に行きやすいから、原宿の病院がいいのかなと思ったのですが」
「そうね。それでは連絡しておきます」
と快く引き受けてくれたK先生は言った。
「今日から抗生剤、抗炎症剤の補液を背中から入れます」
「背中からですか」
「大丈夫ですよ。猫ちゃんは背中のところに余裕があって、そこに入れてもあまり嫌がらないから。じゃあ、準備しますね」
ジュテはこちらを見たりしながら、やはりおとなしくしている。痛いのか痛くないのかもわからない。猫は我慢強く、痛くてもその素振りを見せないというが、今のジュテもそうなのだろうか。
K先生が診察室を出た後、頭を撫でたり、顔全体を手の平で包んで、触ってあげる。そうしているうちに、涙が思わずこみ上げてきそうになった。
抗生剤、抗炎症剤は病院でよく見かける点滴の袋のようなものに入っている。それをやや温めて注入するようで、院長のアキコ先生が「温度を確認してね」と言っている。体温に近い温度で入れるのだろうか。
太い注射に管をつけて、その先の針から注入する。背中に針を刺されても、ジュテは痛がる様子もなく、ジッとしたまま。3、4分をかけて流し込まれた。
この時の治療費は5775円。明細には「皮下補液」などと書かれている。
(峯田淳/コラムニスト)