スーパーで買ってきたメバチマグロの赤身。それを3切れ、食べやすいように小さく賽の目に切って、お皿に並べてみた。ジュテの口元に置くと、においを嗅ぐような仕種をしてから、舌をチョロチョロと動かし始める。ゆっくりだが、完食してしまった。
「やった!」
砂漠の中で生きていた野生動物の猫は元々、生肉を食べていた。そのDNAは脈々と今も猫たちに受け継がれているのだろうか。
実は刺身がいいと連絡してきたHさんによれば、生の牛肉もいいという。たまたま新聞を見ていたら、病気になった時は生の牛肉を食べさせる、という記事が載っていたのだそうだ。
早速、試みたのだが、こちらは受け付けない。だが、マグロに続いて生のカツオも、うまそうに食べてくれた。ジュテはカツオが大好きで、いつも2切れほどを焼いてほぐして、食べさせていた。焼いているのに気が付くと、ニャーニャーとリビングをうろつくほど、好物だ。
ということで、10月2日を境に、ジュテの食事はとても豪華になった。生のマグロ、生のカツオ、さらに生のシャケを少量ずつ。ほかにも各種カリカリが並び、6皿くらいが目の前にある。人間よりも豪華な食卓になっていった。
10月4日。7時過ぎに起きて、ベッドにいたジュテを抱え、リビングで大好きな膝抱っこ。それから生のマグロを賽の目に切って掌に載せたら、一切れをアッという間に完食してしまった。
昼過ぎ、動物病院で診察、補液とステロイドを入れてもらい、体重も計ったら、3.7キロに落ちた体重が3.82キロまで増えていた。
家に戻って「体重が120グラムも増えたよ」と言って、ゆっちゃんと「よかったね」と喜んだ。ステロイドの影響もあるのだろうが、生の魚を食べて活力が出てきたに違いない。
この日は家に戻ってすぐは、体が落ち着かないのか、シャケもマグロも食べなかったのだが、その後、爆食いモードに突入した。
最初は焼いたカツオを八分目。夕方、ウロウロし始め、カツオ、マグロの生、焼いたカツオを再び。そしてクリスピー8、9個。好きなサーモン入りクリスピーがなくなったので買い足したら、さらに6個。水をガブ飲みし、夜は焼いたカツオとクリスピー、生のカツオとシャケ、寝る前にクリスピー10個…。さらに、お皿に出しておいたクリスピーや、焼いたカツオがなくなっていた。弟猫のガトー、末弟のクールボーイが食べた可能性もあるが、ジュテの食欲がかなり戻っているのは確かだった。
「もう少し体重が戻ったら、思っているより長生きしてくれるかもしれないわね」
と、ゆっちゃんも明るい。
「食べられるのはよくなっているってことだから、もしかするとね…」
淡い期待なのかもしれないが、ちょっとだけ浮き足立っている。
「やっぱり生の魚を食べさせているのが大きいかもしれないね。Hさんに連絡しといてね」
10月6日の時点で、体重は3.82キロをキープし、食欲も変わらず。ステロイドも効いているのだろう。
(峯田淳/コラムニスト)