2019年シーズンの巨人対横浜戦。守る巨人は満塁のピンチ。投手交代の緊張の場面だ。そこで原辰徳監督から次のピッチャーを問われたのは、昨年まで巨人の1軍総合投手コーチを務めていた宮本和知氏(現在は巨人の球団社長付アドバイザー)だった。
「澤村(拓一)でいきましょう!」
そう断言した宮本氏。もちろん宮本氏には澤村を推す確固たる理由があった。だが、原監督の反応は、首を横に振りながら「何を言い出すんだお前は!」とでも言うような、
「んんっ!」
という怒りすら含んだ語調だった…。
当の宮本氏がこんな回想をしたのは、8月13日にYouTubeチャンネル〈こちら野球放送席〉に出演した時のことだった。
宮本氏が言う。
「(原監督から)『次どうする!』ってなった時に、『澤村でいきましょう!』ってオレ言ったの。監督が『んんっ!』って…」
現在はMLBのレッドソックスに籍を置く右腕、澤村拓一。この年は中継ぎを主に任され、2勝2敗1セーブ13ホールドの活躍を見せたが、この時点では制球難と「ピンチに弱い」といった課題があった。
満塁のピンチに澤村…。
「オレも怖いのよ。ここで澤村って監督に伝えるの怖いよ…」
しかし、相手バッターとの相性から「澤村しかいません!」と言い放ったという。失敗すればきつく叱責されるのも覚悟のうちだった。すると原監督は、
「よし、わかったよ!」
結果は三振。宮本氏は投球中は「祈り」、三振に打ち取ったときは「心の中で泣いた」と話した。
試合後、原監督からは「宮、ありがとう!」とおほめの言葉をもらったのだとか…。
話しながらも、しきりに額の汗を拭う宮本氏、いま思い出しても緊張してしまう出来事だったようだ。
(所ひで/ユーチューブライター)