「大勢になんか異名ほしいよね。ビッグモーメントとか。ちなみに岡本はいいかげん、ファブルって呼ばれてほしい」
そんなファンの声が挙がったのは9月8日、巨人対DeNA(東京ドーム)の試合後だった。
巨人は4回表、DeNAに4点の先制を許すも、その裏に7番・大城卓三が3ラン。続く5回にも4番・中田翔が19号3ランを放って6対4と逆転に成功する。
8回に1点差に詰められたところで9回のマウンドに上がったのは、新守護神の大勢である。先頭打者にヒットを許すと、一死から盗塁を決められるなどして、二死二塁で打者・大田泰示を迎えた。
カウント2-1からの4球目。大田の打球は三塁側エキサイトシートに飛び込むファウルフライとなったのだが、岡本和真がエキサイトシートに頭から突っ込む意気込みを見せたのだ。
捕球はならなかったが、岡本は観客席から沸き起こる拍手の中、何食わぬ顔で三塁の守備に戻ったのだった。
大田を三振に仕留め、新人歴代単独3位となる32セーブ目を挙げた大勢は試合後、こう振り返っている。
「今日は(岡本)和真さんのプレーには、本当に奮い立たされました」
そして冒頭のファンのつぶやきは、そんな両者の姿に向けられたものだったのだ。
ちなみに「ファブル」とは、南勝久原作の人気漫画「ザ・ファブル」の主人公、佐藤明を指す。殺し屋の殺しを引き受ける殺し屋をも表情ひとつ変えずに圧倒し、裏社会で「ファブル」と呼ばれる超凄腕の元殺し屋だ。
19年と21年には、元V6の岡田准一主演で映画化もされたが、原作で描かれる風貌は、むしろ「岡本に酷似している」と、かねてより囁かれていた。
どんな相手も6秒で倒す訓練を受けたという、ファブル。守備では闘志を見せたが、4番を中田に奪われ、本塁打でもヤクルト・村上宗隆にダブルスコアをつけられる岡本が真にそう呼ばれるためには、対戦相手を圧倒し戦意を喪失させるような打撃、プレーを見せ続けられるかどうかにかかっている。
(所ひで/ユーチューブライター)