近年の猛暑や豪雨などの異常気象は地球温暖化が原因とされるが、その地球温暖化の要因の一つと指摘されているのが、「牛のゲップ」だ。
サイエンスライターが説明する。
「牛や羊など、4つの胃を持つ反芻動物は、消化をする際にメタンを発生させます。その量は牛1頭から一日当たり200~800リットル。総量にすると年間20億トンと推定され、全世界で発生する温室効果ガスの4%にあたる。これが地球温暖化を促進させるわけです」
ではこのメタンガス、何とかならないものなのか。目下、日本では油脂メーカーが農家の協力を得て進めているのが、亜麻仁油由来の脂肪酸カルシウムを飼料に混ぜ込み、牛に与える取り組みである。
「亜麻仁油は、植物のアマの種子から取れる油。オメガ3脂肪酸が含まれ、最近はその健康効果が注目されています。具体的には脳細胞の活性化、動脈硬化・高血圧・脳梗塞・心筋梗塞などの予防、免疫機能の改善や促進、コレステロールの低減効果などがあり、まさに至れり尽くせりの栄養の宝庫。そんな人間にとって非常に有益な効果をもたらす亜麻仁油が、牛の排出するメタンガスを抑え、何と地球環境にも絶大な効果をもたらすというわけです」(科学誌編集者)
亜麻仁油のほかにも、オーストラリアでは海藻のカギケノリを飼料に混ぜ、メタン排出を80%抑えたとの研究結果があるという。
「海藻は光合成をするため、大気からのCO2を効率よく取り込むことができる。そればかりではなく、少量の乾燥カギケノリを穀物飼料に混ぜて牛に与えたところ、メタンの排出が劇的に減ったというのです」(前出・サイエンスライター)
ただ、こうした抑制物質を15億頭の牛に与えるというのは土台無理な話。牛のゲップを含め、結局は各国が対策を練り地道に努力していかなければ、温暖化は食い止められないということだ。
(蓮見茂)