「残業代ゼロ」「配偶者控除の見直し」‥‥、政府が検討しているのは会社員の給与削減案ばかり。リストラに脅え、日々のヤリクリで頭をひねるぐらいなら、「商売を始めようか」とお考えのあなた! 世知辛い世の中を生き残るのは、そんなに甘くない。まずは賢い自営業者たちの雑草よりたくましいお金の知恵に学ぶべし!
「辞めてみて初めて、いかに会社員が恵まれているかを実感しましたよ」
こう話すのは、埼玉県在住の広川京助氏(50)=仮名=。この4月に27年間勤務した広告会社を退職し、3年前から通った学校で得た技術をもとに、7月の整体院開業を目指している。
その広川氏が最初に直面したのが、税金・年金・健康保険に関する苦労だった。会社員から自営業者となれば、今まで給与から天引きされていた諸々の支払いを自分でしなくてはならない。所得税は確定申告をする、厚生年金は国民年金に切り替える、健康保険も国民健康保険に切り替えなくてはならない。広川氏が続ける。
「その手続きの煩雑さにも面食らいましたが、先に天引きされていた金額をあとから自分で払うことになって、あらためて気づくことが多かったですね。特に健保は今まで会社が半分を支払ってくれていたから、国保に切り替えようと役所に行って、支払うべき金額の多さにびっくりしました」
国保の保険料は自治体によって計算方法が違うものの、前年度の所得と扶養している家族の人数によって計算される。広川氏の場合、会社員時代の給与が前年度の所得となり、大学生の息子を扶養している。退職金は開業資金と息子の学費に充てる予定で、現在収入がない広川氏にとって国保の保険料はバカにならない金額だった。しかも国民皆保険であり、支払わないわけにもいかない。
しかし、健保の保険料には脱サラ直後の自営業者だけに適用される、ちょっと得する手法が存在する。
社会保険労務士の稲毛結佳氏が話す。
「昨今は国保の保険料が、かなり上がったと実感している自営業者の方は多いですよ。これは、後期高齢者医療費への支援金などもあり、課税所得が多い人ほど、国保の負担増を感じています。脱サラした方なら、会社員時代の健保の任意延長制度がありますので、国保とどちらのほうが保険料が安いか、窓口で試算してもらったほうがいいですね」
この制度を知った広川氏は、さっそく退職した会社が加入していた健保組合へと向かった。
「任意延長には条件がありましたが、私はそれをクリアしていました。実際に試算してもらったところ、国保と比べたら月額5000円も安かった。すぐに任意延長の手続きをして来ました」(前出・広川氏)
最大2年間は会社員時代の健保に加入できることになった広川氏。国保と比較して、2年間で12万円も保険料が安くなったのだ。
これから国保の保険料や住民税の請求が届く自営業者にとってはうらやましい話だが、独立開業をもくろむ会社員なら、知っておくべき制度であることは間違いない。