プロ野球は5月20日から交流戦が始まり、ペナントレースも一区切りとなりました。阪神は広島、巨人と上位争いを続けていますが、ここまでの戦いを支えたのは、何といっても打線の頑張りです。
つながりのよさを象徴するシーンが、4月29日の広島戦(甲子園)の2回に一挙7点を奪った集中打でした。マートンの左前打から始まる計6安打1四球の打者10人の猛攻で、とどめは4番・ゴメスの豪快な左越え3ランでした。各打者が自分で決めようとするのではなく、後ろの打者に回す意識が強いので、不利なカウントでも粘って、安打や四球でつなげることができたのです。
中でも目を引いたのは、無死一塁の新井良太の打撃です。1ストライクから野村のスローカーブを左前にはじき返しました。狙い球ではない球でしたが、高めに浮いてきたところを目で判断、頭で考える前に自然とスイングできたのです。
相手の野村とは4月15日にも対戦し(マツダ)、5回5失点と打ち崩しました。そのリベンジとして、野村は前回の登板ではあまり投げなかったスローカーブを初回から多投し、緩急で活路を見いだそうとしました。その勝負球をいとも簡単に良太に捉えられ、一気に崩れてしまったのです。
スローカーブを自然と打ち返すのは、簡単なことではありません。特に早いカウントでは打者心理として「打ち損じたら、もったいない」と思うのです。技術的にも構えた時にトップで力が入っていては、反応できない球。ムダな力を抜いて、リラックスした状態のトップを作れていたからこそ、良太はしとめられたのです。
この「脱力」は、打撃の重要なポイント。良太にも秋季キャンプで「力を抜いてバランスよく振ること」をアドバイスしましたが、ある程度、実践できるようになりました。投手というのは、常に打者のタイミングをズラそうとしてきます。トップで力を抜くことができなければ、勝負の主導権を握る投手に対して、柔軟に対応することができないのです。
さらに、力を抜けばヘッドスピードそのものも速くなります。スイング中に腕の筋肉が固まれば、バットのヘッドは走りません。上体の関節を柔らかく使い、バットと腕が一体化してムチのように使えるのが理想です。
難しいのは、力を抜くことと軽く振ることは違う、ということです。150キロのストレートを軽く振っていては前に飛ばせません。特にホームランを打とうと思えば、ゴルフで言うところの「マン振り」が必要です。プロゴルファーが軽く振っているように見えても飛ぶのは、力の入れ所をわかっているからです。大事なのは土台となる下半身が安定していること。腕よりもパワーのある足の力を使って、軸回転で打っているからこそ、上体の力が抜けているように見えるのです。野球のスイングも同様に、下半身の力を最大限に使って、インパクトの一瞬にだけパワーを伝えられればいいのです。
(数字は全て5月14日現在)