次走、4月20日の皐月賞で、トーセンスターダムは単勝5.4倍の3番人気に支持された。
「いろいろなことが初体験でしたね。関東への輸送、多頭数の競馬、そして、悪化した馬場」
速いスタートを切ったスターダムは、好位の5番手につけてレースを進めた。
「馬が前半から、今までにないぐらい力み気味に走っていた。ただ、流れを見てポジションを取ろうと思っていたんですけど、予想以上にすんなりと、いいところが取れましたね。向正面では目の前にトゥザワールドがいて、いい感じだった。これなら勝つんじゃないか、と思いました」
ところが、3コーナーに入ると、急に手応えが怪しくなった。
「馬場の悪いところに入ったとたん、馬が減速してしまった。あそこでダメだ、と思いました。今年の中山の3、4コーナーは、芝がほとんどないような馬場状態なんです」
直線、馬群の中で伸びを欠き、11着に敗れた。
「3、4コーナーの走りからすると、いちばん後ろまで下がりそうな感じだったのに、直線ではそんなに離されず、1秒も負けなかった。敗因は何でしょうね。良血の高馬だからそう思ってしまうのかもしれないけど、皐月賞の時点ではまだお坊ちゃまで、根性が足りなかったのかもしれません。2カ月以上間隔が空いて、まだキャリアが4戦目だったこともあったのかな」
もちろん、敗戦から得られたものもあった。
「あのレースで、また新たに感じるところもありました。今度は、初めての左回りになるけど、そういうのは心配ない。関東への輸送も2度目になるし、雨に降られても、あそこまで馬場が悪くなることはないでしょう。でも、一気に人気が落ちるでしょうね」
その口調にも表情にも暗さはない。
「それはもちろん、無敗で皐月賞もダービーも勝ちたいと思っていたから、残念な気持ちはあります。ただ、皐月賞もトライアルも終わった今、望みを持ってダービーに出られそうだな、という感触はあります。混戦と言うと皐月賞を勝った馬に失礼かもしれないけど、逆転は不可能ではないと思っています」
スターダムはこんなものではない、と相棒の底力を信じている。
「もっと走りそうな感じがずっとしているんです。皐月賞で全力を出し切って4着や5着で、そこからダービーに向かうことになっていたら嫌だったかもしれないけど、全然走っていなかった。だから、皐月賞が終わっても失望することはなかったですね」
◆聞き手・島田明宏(作家)
◆アサヒ芸能5/27発売(6/5号)より