ペナントレースの鍵を握る交流戦が始まりました。2連戦の戦いは、本当に気が抜けません。チーム状態が悪い時に、3連戦なら1勝2敗でしのげますが、2連戦では歯止めが効かない危険性があるのです。交流戦の失速で優勝争いから脱落するケースもあります。まずは24試合を勝率5割で乗り切ることが大切で、それをクリアできれば阪神にも優勝のチャンスが出てきます。
そして、交流戦でセ・リーグの監督が毎年悩むのが、指名打者の人選です。しかし、今年の阪神は迷う必要がありません。今季は初の試みとしてセ・リーグの主催試合でDH制採用、パ・リーグの主催試合でDH制不採用となりました。甲子園で行われるDH制の12試合は「5番DH・マートン」が最善の策です。
DH制では、ついつい攻撃型のオーダーに走ってしまいがちです。特に今年の阪神は、そう考えたくなる選手がベンチにたくさん控えています。三塁の定位置争いを続ける新井良と今成はどちらも使いたいですし、一塁の定位置をゴメスに譲り控えに甘んじている新井貴や、代打で好調の関本も先発で使ってみたい選手です。しかし、舞台は外野の面積が飛び抜けて広い甲子園。打力より守備力優先でオーダーを決めるべきなのです。
バースが持っていた球団の外国人通算最多安打記録を更新したマートンですが、左翼の守備には不安を抱えています。5月16日のDeNA戦(甲子園)でも記録に残らないエラーで能見の足を引っ張りました。3回一死の梶谷のポテンヒットを緩慢な処理で二塁打にしてしまったのです。試合は最終的に1─3で敗れましたが、この回の2失点が致命傷となりました。ランナー二塁でレフト前の当たりをチャージせず、最初から本塁で刺すことをあきらめるシーンもよく目にします。投手のリズムを崩さないためにも、マートンはDHで使うほうが得策です。
なぜ、攻撃よりも守備にこだわるのか。阪神が優勝争いで生き残るためには、能見、メッセンジャー、藤浪の先発3本柱の奮起が絶対条件だからです。たとえ打線の援護がなく0─1で負けても、緩慢な守備やエラーで失点を重ねての敗戦よりも、彼らも納得できるはずです。交流戦前の成績は能見とメッセンジャーが4勝4敗、藤浪が2勝2敗と3人で貯金0。これではチームが苦しい戦いを強いられるのも当然です。
それにしても、今季の能見は、開幕戦の10失点KOから始まり、ピリッとしません。交流戦が始まる前の段階の防御率4.69は、セ・リーグ投手成績の規定投球回到達者の最下位です。投球そのものにも、らしさがありません。迫力というか、強さというか、エースとして背負っているものが感じられないのです。
もともと能見はグラウンドで喜怒哀楽を出すタイプではありません。ですが、内面には激しいものを宿しているのです。それが珍しく表に出たのが昨年8月29日の巨人戦(東京ドーム)でした。3連戦3連敗を喫し、リーグ優勝が絶望的となった一戦。先発の能見は9回裏に同点に追いつかれたところで降板となり、ベンチに帰ると、グラブを叩きつけたのです。どういう感情での行動かは本人にしかわからないことですが、激しい自己表現もエースだからこそ許されること。もっとベンチに、ファンに対して、メッセージを発してほしいのです。今年はどこか冷めているような気がしてなりません。