もう1人のエース格・メッセンジャーも、甲子園と他球場では別人の投手になってしまいます。交流戦前までの4勝4敗は、白星が全て甲子園で、黒星は全てビジターでのものです。防御率も0点台と5点台で極端に違います。敵地でも力を発揮できないようでは、チームからの信頼を得ることができません。
メッセンジャーの甲子園での好成績の理由は、浜風と球場の広さを味方につけた投球にあります。高めのストライクからボールゾーンのストレートと高速フォークによる高低で打ち取っているのです。左右のコントロールは甘くなっても、甲子園の特性を生かして、パワーでねじ伏せていく投球です。5月17日のDeNA戦では、村山実さん、バッキーに続き3人目となる甲子園球場での3連続完封勝利をマークしました。
ところが、ビジターでは高低だけのパワー一辺倒の投球では通用しません。甲子園では浜風で押し戻された打球が、他の球場ではスタンドに届いてしまうのです。やはり投手の基本は外角低めへの制球力。夏場から秋にかけて、どんな投手でも疲労の蓄積で球威が落ちてきます。得意の甲子園での登板も、パワーだけでは通用しなくなります。球場の好き嫌いをなくすため、外角低めでしとめるリズムを思い出さなければいけません。
3本柱の最後の1人の藤浪は、100球前後で失点するパターンを繰り返しています。交流戦開幕の20日のオリックス戦(京セラD)では100球どころか59球、2回6失点でKOされました。スタミナと制球力に課題があるのは明白で、早く本来の姿を取り戻してほしいものです。
しかし、能見とメッセンジャーの勝ち星が伸びないと、藤浪も目先の勝利に捉われすぎて、足元をじっくり見つめることができません。藤浪を目覚めさせるためにも、能見とメッセンジャーが安定した投球をする必要があるのです。
首位の広島は42試合を27勝15敗で交流戦に突入しました。勝率6割4分3厘は144試合で換算すると90勝を超えるペースです。どこかでペースダウンするとしても、優勝ラインは85勝、貯金25を超えることが予想されます。そう考えると、現在0の阪神3本柱での貯金は、最低でも15が必要です。ノルマはシーズントータルで1人当たり貯金5ずつ。パ・リーグの好投手との投げ合いで、彼らの真価が問われます。