新型コロナの感染拡大が「第8波」に突入した。名古屋工業大学の研究グループによれば、首都・東京では来年の1月中旬頃に第8波のピークを迎え、かつ、ピーク時の感染者数は第7波の2倍(過去最多)になる恐れがある、と予測されている。
一方、新型コロナを巡っては「ウイルスはやがて弱毒化して『ただの風邪』になる」との終息説も根強く囁かれてきた。そんな中、新型コロナに対する警戒感は次第に薄れつつあるが、この手の終息説は科学的に正しいと言えるのか。日本におけるウイルス学の権威が、次のように真相を明かす。
「終息説の根拠となっているのは『ウイルスは生き延びるための生存戦略を有しており、宿主を殺してしまうような強毒化は起こらない』という考え方。宿主が死んでしまえば、自身も死んでしまうからです。しかし、ウイルスに意思など存在しません。実はウイルスの変異は全くの偶然に支配されており、弱毒化するか強毒化するかは時の運。つまり、弱毒化と強毒化の変異確率は、常にイーブンということになります」
しかし、新型コロナが「感染力は強くなるが、重症化力は弱くなる」という弱毒化のプロセスを歩んでいるように見えるのも、また事実だ。その結果、やはりいずれは「ただの風邪」となって終息していくのではないか。ウイルス学の権威が続ける。
「風邪のウイルスもコロナウイルスの一種ですが、大昔には猛烈な強毒性ウイルスへと変異した可能性があります。その場合、当然のことながら宿主は次々と死んでいき、ウイルスもまた、次々と死滅していきます。そして強毒性ウイルスが次第に劣勢となる中、ウイルスの新たな突然変異によって、弱毒性ウイルスへの置き換わりが起きた。つまり『ただの風邪』として終息を見たのは、偶然の結果にすぎなかったのです」
翻って現今の新型コロナについて言えば、このような猛烈な強毒化はまだ起きていない。要するに今後、大量死を招く強毒化が何回にわたって起こるのか、はたまた強毒化せずに終息していくのかは、科学的には全く予見不能の領域にある問題だと、ウイルス学の権威は警鐘を鳴らしているのである。
「正しく恐れる」ために不可欠となるのは、希望的観測ではなく科学的根拠である。ゆめゆめ警戒を怠ってはならないということだ。