ポーランドの東部、プシェボドフにミサイルが着弾し、2人が犠牲になった事件。うち1人の住民男性の葬儀が19日、地元で執り行われた。
地元メディアの報道によれば、男性は62歳。当日は穀物乾燥施設での勤務中、ミサイルが落下し被害にあったと思われるが、18日からの現場調査には、ウクライナ政府が派遣した専門家も加わり、連日、ポーランド政府主導による調査が続いているという。
全国紙国際部記者が解説する。
「今回のミサイル着弾について、ウクライナのゼレンスキー大統領は、直ぐにビデオ演説し、ミサイルはロシア側が発射したものとして、『緊張を激化させる非常に重大な行為だ。NATOの行動が必要とされている』と訴えました。しかし、バイデン米大統領は『調査が完了するまでは言いたくない。軌道からみてもロシアから発射された可能性は低い』とコメント。NATOのストルテンベルグ事務総長も『ウクライナの防空ミサイルの可能性が高い』と明言したことで、ロシア側は“それ見たことか”とゼレンスキーを批判。その一方で『アメリカ大統領は抑制的で、プロフェッショナルな反応だった』と持ち上げるなど、ウクライナとしては、上げた拳の落としどころが難しい状態になっているのです」
実際、ロシアがこのミサイルをポーランドに意図的に落としたとなると、NATO条約第5条で集団的自衛権が発動されてしまう可能性があり、そうなれば文字通り、この1発がきっかけで第三次世界大戦へ突入、というシナリオも現実味を帯びてくる。
「NATO側はその点を最大限配慮し、『これが迎撃だとしても、責任はロシアにある』とウクライナを擁護していますが、ゼレンスキーとしてはNATOがどう言おうと、そう簡単に『すみません、ウチのでした』とは言えない。なぜなら、『自分は軍の報告を疑わない』と言っている以上、それをやったら軍全体の士気が低下してしまうからです。ですから、結果が出るまでは『あれはロシアのミサイルだ!』というスタンスは曲げないはず。そもそも、相手が撃ってこなければ迎撃しなくてよかったという気持ちが強いため、そう簡単には認めないと思いますね」(前出・国際部記者)
実は、今回の発言をはじめ、近頃のゼレンスキー大統領の姿勢を巡り、西側諸国の間で温度差が生まれつつあるという。国際部記者がさらに続けて、
「西側としては、できうる限りウクライナを支援しているのに、支援するのは当然だといわんばかりのゼレンスキーの態度が、許容されなくなりつつあるんです。加えて、戦争によってエネルギー資源の供給が減り、世界中で物価が高騰してしまった。これがよく言われる『ウクライナ疲れ』というものですが、ロシアにせよウクライナにせよ、停戦に積極的な姿勢を示す気配は微塵もない。いつまで我慢すればいいか見当もつかず、戦争が長引けば長引くだけ、各国の支援の熱も冷めていくことが予想されます」
バイデン政権は、すでに189億ドル(約2兆7500億円)超の軍事支援をウクライナに供与してきたとされる。先の中間選挙では上院は辛うじて民主党が過半数を維持したものの、下院は共和党が多数を占めることになり、この先の軍事支援も不透明な状況になってきた。
ゼレンスキー大統領はどうけじめをつけるのか。
(灯倫太郎)