ロシアのウクライナ侵攻が続く中、ここにきて“戦争の終わり方”が議論になるようになった。いよいよ終戦が近いのだろうか。
きっかけは5月23日にスイスのダボスで開かれた世界経済フォーラムでの米国ヘンリー・キッシンジャー元国務長官の発言だった。キッシンジャー氏は「戦争前の分割ラインに戻るべきだ。それ以上を求めるのは、ウクライナの自由ではなく、ロシアに対する新たな戦争になる」と語り、終戦に向けた具体的な条件を提示。これが、ロシアが併合しているウクライナ南部のクリミア半島や東部ドンバス地方の割譲を意味するとも捉えられ、物議を醸した。
この発言にウクライナのゼレンスキー大統領は猛反発したが、今後、終戦のカギを握るのは、西側諸国の代表たるアメリカだという。
「ゼレンスキー氏は一歩も引かない姿勢を堅持していますが、いずれ譲歩せざるをえない日がくるとの見方もある。というのも現在、ウクライナはアメリカやイギリスなど西側諸国から武器供与を受けており、もしメインとなるアメリカがこれを中止すれば、たちまちロシアに屈服することになるのは明らかだからです。長引く戦争で、原油高にインフレ、小麦不足など世界中が混乱に陥っている。今後、アメリカにとって経済的に自国の不利益になるような状況が続けば、バイデン大統領は終戦に向けて動き出すでしょう。その際、今も外交で影響力を持つキッシンジャー氏の発言が現実味を増してくるでしょうね」(政治ジャーナリスト)
前述の世界経済フォーラムで、キッシンジャー氏は「今後2カ月以内に和平交渉を進めるべきだ」とも訴えている。バイデン氏がこれに呼応する動きを見せたときが、終戦へのカウントダウンの始まりになるかもしれない。
(ケン高田)