ロシア軍が占領していたウクライナ西部のハルキウ州と南部ヘルソン州を、ウクライナ軍が8カ月ぶりに奪還。ロシア軍の撤退後に調査に入ったウクライナ警察は、両州で少なくとも991人の民間人の遺体を確認したと発表した。
「ウクライナ政府は7つのチームで編成した『戦争犯罪捜査隊』を現地に派遣。ロシア軍による不法行為の証拠集めを進めてきましたが、ウクライナ検察庁は21日、ヘルソン州ドニエプル西岸地域の4カ所に『拷問用施設』が設置されていた、と発表。現場には、ゴム製の警棒や木製バット、電気で拷問した装置の残骸などのほか、施設運営にかかわる関係書類も残されていたといいます。また、住民を拘束するための施設も11カ所見つかっており、今後、同地域でロシア軍が行った残虐行為の数々が明らかになっていくはずです」(国際部記者)
ウクライナのモナスティルスキー内相は、同地で拷問の痕跡のある63人の遺体が見つかったと説明。「今後も多くの地下牢や埋葬場所が見つかるだろう」と述ベている。さらに同相は、ヘルソンで行方不明の市民が700人以上おり、それらはすでに死亡しているか、ロシア占領地またはロシア本国に不法に連れ去られた可能性があるとも指摘している。
「BBCやCNNが奪還後の現地に入り、実際に拷問された市民の談話を取っています。ある男性は銃を突き付けられ施設に連行されると、殴打や電気ショックなどの虐待を連日受け、血尿が出たうえ、体重が25キロも減ったといいます。また別の男性は、座った状態でパイプに手錠でつながれて横になることも出来ず、5~6日間にわたって殴られたあげく、2時間ごとに無理やり起こされ、自分の名前を言わされたと証言しています。これらの話が事実だとしたら、明らかな国際法違反行為。一刻も早い全容解明が待たれます」(前出・国際部記者)
彼らの証言を裏付けるように、ヘルソンで発見された遺体には、首にロープをかけられたもの、手を縛られたもの、腕や脚を折られたり銃で撃たれたものが多く、さらには「男性の下腹部が切断された」複数の遺体が見つかっているとの報道もある。
現地調査により次々と明らかになる、耳を覆いたくなるような拷問の惨劇。人権無視、人命軽視のこの愚かな争いは、はたしていつまで繰り返されるのだろうか。
(灯倫太郎)