現地で取材を続けるサッカーライターの宇都宮徹壱氏が言う。
「中田英寿、中村俊輔のWエースを擁した06年のドイツ大会では、ジーコ監督(当時)が敗因の理由として『チーム内に“腐ったみかん”がいた』とあげたとおり、レギュラー組と控え組に亀裂が生じ、グループリーグで敗退しました。一方、ドイツ大会の失敗を踏まえて臨んだ10年の南アフリカ大会では、ベテランと若手が融合してチームが一丸になったことで、戦前の下馬評を覆してベスト16入りを果たした。ドイツ大会の失敗、南アフリカ大会の成功を糧に、ザックジャパン体制下ではこれまで“和”を重んじたチーム作りが行われてきました。結果、米国タンパで行われた直前合宿のチーム内の雰囲気も非常によかったです」
とはいえ、不安要素は精彩を欠く本田だけではない。
「右膝に故障を抱えるキャプテンの長谷部誠(30)、酒井高徳(23)は初戦のコートジボワール戦に間に合わないと見られています。さらに内田、吉田も試合には出場しているものの故障明けで、長友佑都(27)は先日のキプロス戦で右ふくらはぎを打撲、好調をキープしていた岡崎までがコスタリカ戦後に発熱している。レギュラーを担ってきた今野泰幸(31)にしても、所属するJ1ガンバ大阪において絶不調でスタメン落ちの体たらくですからね」
こう嘆く、日本サッカー協会幹部が続ける。
「今大会は、高温多湿と過酷なコンディションの中で行われます。そのため、3人の交代枠やスタメンの入れ替えなど、総力戦がポイントとなるのに、90分計算できる選手はボランチの山口蛍(23)くらいで、本田を筆頭にコンディションが悪い選手が多すぎる。コンディションよりも“チームの和”を優先したザッケローニの選手選考が凶と出なければいいのですが‥‥」
こうした状況下、空中分解を食い止める予防線として日本サッカー協会が招集を図ったのが「キング・カズ」こと三浦知良(47)だった。だが、そのプランまでもが裏目に出たという。
「6月5日、協会はカズをW杯親善大使としてブラジル派遣することを発表しましたが、実は当初は選手へのサポート役としてチームに帯同させる方向で動いていた。ところが、ザッケローニ監督に『波風を立てるようなことはしてほしくない。チームには関わらないでほしい』と一蹴されて方向転換したんです」(日本サッカー協会関係者)
チーム内は不調選手だらけで、バックステージでの足並みすらそろわない。それでも、6月15日午前10時には、W杯グループリーグ初戦となるコートジボワール戦を迎えてしまうのだ。
早く本田が目覚め、4年前のように劇的な快進撃を演出してもらいたいものだが──。