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ザ・ブルーハーツ「情熱の薔薇」軽快なサウンドの中に潜んでいた「奥深い歌詞」/日本音楽シーン「名作裏面史」

 ザ・ブルーハーツが残した不滅の名曲「情熱の薔薇」が、ハイスタンダードやWANIMAなどのイラストを担当してきたダイスケ・ホンゴリアンにより、12月10日、絵本となって発売された。この絵本は楽曲の歌詞に着目し、人気のイラストレーターが自らのフィルターを通してその世界観を絵本として再構築する「歌詞の本棚」というプロジェクトによるもので、今回がその第一弾となる。

 ザ・ブルーハーツの結成は85年。インディーズ・レコードのリリースラッシュの中、87年に「THE BLUE HEARTS」でメジャーデビューした。甲本ヒロトが歌い上げるシンプルな言葉を繋ぎ合わせたボーカルと、ストレートなバンドサウンドで人気を博し、若者の圧倒的支持を獲得。

 3作目の「TRAIN-TRAIN」が大ヒットして人気に拍車がかかった彼らが90年7月、イーストウエスト・ジャパンから発売した通算9枚目(アルバム「BUST WASTE HIP」からの先行シングル)が「情熱の薔薇」だった。

 このシングルはオリコンで週間1位を獲得。さらに、月間1位、年間7位という記録を打ち立て、「お茶の間に届いた初のパンクロック曲」として、日本音楽シーンの歴史を塗り替えることになるのだ。

 とはいえ、彼らにはもともと、パンクにまとわりつく、ある種の呪縛はなかったように思う。確かに彼らが登場する前、パンクロックのイメージは反抗的で破壊的、さらには暴力性を帯びたものだった。しかし、ザ・ブルーハーツの「パンク」は「ドブネズミみたいに美しくなりたい」と歌う「リンダリンダ」にせよ、実直なまでに真正面から「ガンバレ」というメッセージを送る「人にやさしく」にせよ、そこには、パンクのセオリーとは真逆な、人懐こくて優しい、そしてなんとも痛快な世界観があったのだ。

 さらに「情熱の薔薇」にみられるような歌詞の秀逸さは、間違いなく他のバンド勢から一歩抜きんでていた。というのも実はこの曲、軽快なサウンドからポジティブな印象を受けるが、どうして歌詞の内容がなかなか奥深い。

 90年といえば、まだバブル絶頂期。バンドブームの真っ直中だ。世間が浮かれまくった状況の中、のっけから「永遠」の終焉を匂わせる歌詞を持ってくるあたりは、実にリアルで、だからこそ、なるべく小さな幸せと、なるべく小さな不幸せを集めよう、と畳みかけている。

 要は、さりげない日常の中にこそかけが得ないものがあるんだよ、との彼らなりのメッセージなのだが、当時はこの奥深い歌詞を聴き、驚愕したものだ。数々のフォロワーを生み出したザ・ブルーハーツ。彼らが日本の音楽史にその名を刻んだ名作が、この「情熱の薔薇」だったのである。

(山川敦司)

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