芸能

渡辺徹「太く短い」豪胆すぎる61年の生涯

 11月28日に敗血症のため61歳で亡くなった俳優の渡辺徹。その一因とされる糖尿病発症は30年も前のことだった。長きにわたる闘病生活を思えば、さぞや苦悩が多かったことだろう。と思いきや、その生き方は豪放磊落そのものだった。

 家族葬を執り行った12月5日、妻の榊原郁恵(63)は長男である渡辺裕太(33)とともに報道陣の前で葬儀の報告をした。

「目に涙を溜める場面もありましたが、郁恵さんは棺に納めた品を問われると、『山盛りのご飯ですね!』って笑いを誘ったり、最後まで明るい雰囲気を崩しませんでした。ただ、それを聞くと、食事制限で懸命にサポートしていたことがわかりました」(芸能記者)

 妻の支えなしに生きていけないほど、渡辺の晩年は病気との闘いの連続であった。13年に急性膵炎を患い、その後は糖尿病に伴う腎不全で人工透析の日々となった。昨年も大動脈弁狭窄症の手術を受け、今年は新型コロナに感染して入院もしていた。そんな病歴の分岐点が、12年4月の虚血性心疾患による心筋梗塞だという。スポーツ紙デスクが当時を振り返る。

「この時、渡辺さんは俳優になって初めて舞台を降板しました。ドクターストップではなく、郁恵さんの進言によってでした。人生初の大病で渡辺さんは『女房に助けてもらった』と感謝。ここから本格的に節制するようになるのです」

 入院生活は1カ月に及び、ピーク時に130キロだった体重が退院時には78キロまで減っていた。誰もが驚くほどスリムになった。

 しかし、裏を返せば、それまで不摂生を顧みることがなかったことになる。30歳の時に糖尿病と診断されたにもかかわらず‥‥。

 91年6月10日夜、当時のレギュラー番組5本のうちの1つだった「料理天国」(TBS系)の収録中に体調が悪化して、病院に直行。翌日に「急性糖尿病」と診断された。検査の結果を受けて、主治医から「このままでは心筋梗塞と脳血栓で倒れる」と告げられていたという。

「当時、渡辺は『料理天国』で出てくる料理を全部、たいらげていたというんです。2週まとめ撮りすることもあるのに、聞いているほうが胸やけしそうでした。心配する郁恵さんを前に緊急入院する渡辺本人は『大丈夫。人間ドックに入るようなものだよ』と言ったというんですから豪胆というか何というか」(前出・スポーツ紙デスク)

 それは退院後も変わることはなかった。民放局関係者によれば、

「ロケ弁3人前をペロッと食べ、夜は仲間やスタッフと飲みに行く。タバコもバンバン吸っていました」

 まさに豪遊である。中でも、食欲は抑えきれなかったようで、マヨネーズを直接チューブから吸うと公言。「元祖・マヨラー」とも呼ばれていた。

「白いキャップのカロリーハーフが発売された91年頃に、『ウチも白になった。やっぱり赤(キャップ)だよ』と嘆き、控える気はさらさらない口ぶりでした(笑)」(前出・民放局関係者)

 英雄色を好むではないが、アッチのほうも旺盛であった。93年3月に美人モデルが渡辺との愛人関係を「女性セブン」で告白。ベッドで「俺のこと好きか?」と尋ねる姿を暴露されてしまったのだ。

「表向きは渡辺さんが会見に応じて『知り合いではあるけど、“愛人”と呼ばれる関係じゃない』と否定。ただ『これで高い買い物させられそうだな』と話した通り、後日、郁恵さんにベンツを買ってあげるという笑いに変えていました。実際は、修羅場があったようですが、渡辺さんはおくびにも出さず、私らの前では『遊ぶなら素人はダメだな。お茶屋の玄人にしなきゃ』と冗談を飛ばしていました」(前出・民放局関係者)

 糖尿病は「勃起障害」を引き起こす。それを恐れて、好き者は節制に励むなんてこともあるが、渡辺はそんな男ではなかった。

「いわゆる“役者バカ”だった。大手芸能事務所からの誘いもあったのに、最後まで文学座一筋。劇団文学座の大看板だった杉村春子さんから『何でもやりなさい。ただ中途半端にやることだけはおやめなさい』と言われ、それを実行した生涯だった」(前出・スポーツ紙デスク)

 また1人、昭和の快男児がこの世を去った。合掌。

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