吉田正尚外野手のレッドソックス入団会見が開かれた。5年総額9000万ドル(約123億円)は、日本人野手のメジャー1年目最高額となる。そのため、地元ボストンはもちろん、全米の野球ファンの目が吉田に向けられた。
入団会見では、吉田の口からこんな言葉が飛び出した。
「WBC出場には前向きに僕のほうは考えているんですけど、球団側の判断はまだ聞いていません」
現地で取材したスポーツ紙記者が吉田発言を補足する。
「日本のメディアが言わせてしまった感も受けました。大谷翔平、ダルビッシュ有、鈴木誠也が出場を表明したことを引き合いに、『吉田はどうするんだ?』みたいな聞き方をしたのです。でも『まだ分からない、球団と話し合って』のような一歩引いた答え方をしたら、期待してくれるファンに申し訳ない。なので、WBCには出場したいとは答えたが、絶対に出たいというニュアンスではなかったように思います」
とはいえ、引っ込みがつかなくなってしまった感もしないではない。日本の各メディアは吉田の侍ジャパン入りを歓迎しつつも、過去の日本人メジャーリーガーたちが移籍1年目をどう過ごしてきたかも紹介していた。
「移籍1年目にWBC開催が重なった選手は、みな辞退しています。当たり前なことですが、WBCに出場すれば、キャンプ、オープン戦に割く時間は激減します。新しいチームメイトに溶け込む時間がなくなり、メジャーリーグのストライクゾーンに慣れるための実戦的なテスト機会も少なくなってしまいます」(在米ジャーナリスト)
侍ジャパンを指揮する栗山英樹監督は、すでに「向こう(MLB)に渡る選手が夢を果たせるようにやってきたつもりだし、そこは大事にしないといけない」と話している。これは千賀滉大とメッツの大型契約が決まった直後のコメント。しかし、栗山監督の気持ちは吉田に対しても同じだろう。吉田のWBC出場は、レッドソックス側と改めて話し合ってから決めることになりそうだ。
「レッドソックスはWBC出場を認めないと思います。吉田は大型契約ですが、大型契約とはウラを返せば『レギュラーを予定して獲った選手』ということ。球団としては1番・レフトでフル出場してもらわないと困ります」(前出・在米ジャーナリスト)
レギュラーが確定しているのであれば、WBC出場で多少の出遅れがあっても大丈夫のような気もするが、「大型契約=好成績が必須」。出塁率の高さが求められる1番バッターが予定されているのなら、WBCよりもキャンプ、オープン戦に専念してメジャー投手のクセを早く覚えるべきだろう。
ボストンのメディアはとくに“辛辣”で有名なのだから…。
(飯山満/スポーツライター)