では、実際に新型コロナが5類相当に引き下げられた場合は、どうなるか。
発熱外来を設けている医療機関以外の受診も原則可能になる。現実には医療機関が熱や咳のある患者の外来診察と、そうでない患者の外来診察を分けることになるだろう。また、がんセンターや小児医療センター、産婦人科など配慮が必要な医療機関は除外される可能性がある。
そして医療費は自己負担が生じる。患者の経済状況により異なるが、一般的に75歳以上の後期高齢者は1割負担、70歳から74歳は2割負担、70歳以下は3割負担になるのは5類のインフルエンザと変わらない。
例えばコスト2万円のPCR検査は2000円から6000円かかるため、市販の検査キットを使ったほうが安上がりになる。薬価3万円する「ゾフルーザ」であれば3割負担で1万円。5日分で薬価9万円以上する「ラゲブリオ」は3割負担で3万円、後期高齢者でも約1万円の自己負担がかかる。「ゾフルーザ」は症状軽快を1日早める効果があると実証されているが、1日症状を早めるためだけに1万円を払うかどうかは本人しだいだ。
なお、新型コロナを5類にしたからといって、新型コロナワクチン接種が有料になるわけではない。
新型コロナの分類は感染症法に基づくが、新型コロナワクチン接種は「予防接種法の特例措置」扱い。感染症法の5類扱いにしても「予防接種法の特例措置」を継続すればワクチン無償化は続けられる。日本人ヘイト官僚ぞろいの財務省がワクチンの有料化を目論んでいるにすぎないのだ。
新型コロナ患者を毎日50人以上診ている関西の開業医も5類を熱望する。
「我々、発熱外来を続けてきた開業医からすると、発熱患者が一極集中しないよう早く5類にしてほしい。熱を出してハアハア息切れしている80歳以上の高齢者が『かかりつけ医に断られて診てくれる病院が近くにないから』と車を運転して発熱外来にやって来ますが、事故を起こさないか心配です。送迎が必要な患者、足の不自由な高齢者のためには、自己負担が生じても、どこの診療所でも診られるほうがいいでしょう」
濃厚接触者の行動制限もなくなるため、現状よりは交通機関や宅配便、スーパーなどのエッセンシャルワーカーへの影響は少なくなる。学校生活もコロナ前の日常に戻れそうだ。
子供が陽性になっても家族全員が欠勤を余儀なくされることはない。年末年始の帰省を諦めることもなくなり、会食の機会も増える。ただ、同居家族に妊婦や持病を持った人もいるので、職場などでの会食の自由参加は変わらないだろう。
そうなると、コロナの検査をする人も少なくなることが予想される。お金がないと受診をためらう人もいるだろう。我々がコロナ陽性患者と街中や交通機関内で接触する機会が増えるのは確実だ。
2類から5類への引き下げでモヤモヤするのはこの点である。専門家も医師会も、国民に不自由を強いるだけで、我々が知りたい「無症状のコロナ陽性キャリア患者や、ワクチン接種した陽性患者は、他の人にコロナをうつすのか、うつさないのか」という最大の疑問には、1000日経っても回答できていない。
5類に引き下げても自己防衛のためにマスクと換気は必須。そして今、薬局に飛び込んでも陳列棚には薬がない。急な発熱に備えて解熱鎮痛剤やコロナにも効く総合感冒薬は準備しておきたい。
もし急に体調が悪化した時は「♯7119」に電話をかけると救急車を呼ぶべきか相談できる。