新型コロナワクチンを接種しに行っただけなのに、ヤブ医者に殺されてはたまったものではない。
11月5日に愛知県愛西市でオミクロン株対応ワクチンを接種した42歳の主婦が、ワクチン接種から5分後に体調が急変し、適切な治療をされないまま亡くなっていたと、NHKと民放テレビ各局が10日夜、一斉に報じた。
地元メディアによると「亡くなった女性は看護師で、基礎疾患はあるものの、接種当日に体調不良があったわけではない」。さらに「処置にあたった接種会場の医師には『アナフィラキシーに対応したことはありません』と言われた」と遺族が証言しているという。
死亡事故を受けて愛知県医師会は、女性が急変した後の対応について検証すると発表した。厚労省は11月11日に、全国の自治体に新型コロナワクチン接種後のアレルギー反応対応について通知を出したというが、とんだ茶番だ。
「新型コロナワクチンの集団接種」は、国民の命を守る、遠方に行けない地元住民のために行う…というのは、あくまで建前。コロナで患者がよりつかなくなった美容整形外科医や美容皮膚科医、その他のヤブ医者を救済するために税金をバラ撒く「コロナ利権の温床」なのである。自衛隊や、コロナで手術ができない外科医、麻酔科医が手伝いに駆り出される「例外」を除けば、集団接種会場にマトモな開業医がいないことは、医療業界の「公然の秘密」となっている。
アナフィラキシーショックの対応ができる開業医は集団接種会場のアルバイトに行かずとも、自治体からワクチン接種業務を委託されている。自治体が公表している「ワクチン接種が受けられる医療機関一覧」がそれだ。
大学病院や総合病院を定年退職した医師でも、任期中の同僚の信頼が厚く、あるいは製薬企業から信用されていれば、元勤務先や大手ワクチン製薬企業から「お声」がかかる。なにしろ、ワクチン接種の人手が足りない。それらの誘いがかからなかった、自治体がかき集めたアルバイト医師は上記の「例外」を除けば、同僚からも製薬企業からも「ダメ出し」されたヤブ医者なのである。
断言するだけの根拠がある。看護師である筆者は、高齢者への第1回優先接種が始まった1年半前、東京23区の新型コロナワクチン集団接種で、愛知県の死亡事故と同じように「アナフィラキシーショックを見たことがない」「高齢者を診察したことがない」という医師に当たり、えらい目に遭っているからだ。
その日、集団接種にやってきたアルバイトの医師は70代を超える高齢男性と、見た目からしてチャラい金髪の美容整形外科医。90代から100歳を超える高齢者の問診票を見るや、彼らは「あ、こんな高齢の患者さん、診たことないから。看護師さんたちの方が経験あるでしょ。あとはよろしく」と言い捨てて、別室に下がってしまった。
接種可否の判断、アナフィラキシー対応という、医師が本来行う業務まで看護師に丸投げ。高齢医師に付き添ってきたベテラン看護師がその場を取り仕切り、高齢者に同伴した家族がその場で主治医に電話をかけて接種可否の判断を仰ぐなど、その場にいない開業医や病院、区役所職員が総出でできる限りの策を講じ、ワクチン接種を乗り切った。後片付けが終わった頃には、23時を過ぎていた。あとで同僚ナースに聞かされた話がある。
「あのチャラい医者、問診票を持っていったら『接種会場にいるだけで日当30万円。明日の集団接種バイトは50万円。この調子なら、今月のクリニックの家賃はなんとか払える』って言ってたよ」
その場にいるだけで50万円、他の医師にまで迷惑をかけておいて、恥ずかしげもなくのたまう厚顔ぶり。フザけるな、である。
その後、集団接種に駆り出される派遣ナースは写真の通り、募集時の質問項目で「半年以内にアナフィラキシーショックに対応したことがある」と答えた看護師のみになった(モデルナ、武田の場合など)。その場に居合わせた医師が使いものにならないことを前提に、国や製薬企業のマニュアル通りに迷いなく判断でき、動くことのできる看護師が、ヤブ医者の10分の1にも満たない薄給で、コロナワクチン集団接種を下支えしてきたのだ。
ところが第7波の大波が引くや、医療系派遣会社の一部は9月末、10月末に経験豊富なベテラン看護師から「派遣切り」していった。命令通りに動く使い勝手のいい20代の看護師を中心に、人員を縮小。理不尽な死亡事故が起きたのは、人員縮小後の11月初旬だから、起こるべくして起きた人災といえよう。アナフィラキシーショックが心配な人には、信頼できるかかりつけ医でのワクチン接種を勧めたい。
第8波が到来したともいわれる中、厚労省が出した「通知」1枚の紙きれでは、人の命は守れない。日本医師会や地方医師会は国民に行動制限を強いる前に、最低限の救命処置も取れないヤブ医者に「廃業勧告」するのが筋ではなかろうか。
3年が経過しているというのに、コロナ対策は問題山積、ピンハネ利権だらけ。今後もコロナ医療現場の裏側を暴露しつつ、コロナ残酷物語を明らかにしていきたい。
(那須優子/医療ジャーナリスト)