師走に向けてジワジワと増え続ける新型コロナ患者。ようやく季節性インフルエンザと同じ扱いにする議論が本格化しているが、この冬、5類に引き下げなければ病院に押しかけるモンスター患者で医療現場は崩壊の危機に直面する。救急車はおろか、消防車の出動もできなくなると、現場からは悲鳴が上がっているのだ。
なぜ今、5類への引き下げが検討されているのか。全国紙記者が話す。
「SARSやMARSと同じコロナウイルスだったことと、当初はワクチンも治療薬もなかった。死亡率の高さから感染症法の2類に準じる扱いになりましたけど、今は死亡率も下がり、岸田内閣に経済界や財務省からの突き上げもあって、今月2日に成立した改正感染症法に『新型コロナの感染症法上の位置づけを速やかに検討するよう』付則が盛り込まれたのです」
オミクロン株に変異した今夏の新型コロナ第7波の致死率は0.1%以下に下がり、死者の8割以上を持病のある高齢者が占めた。欧米や東南アジアでオミクロン株から置き換わりつつあるケルベロス株、グリフォン株は、感染力はより強いが病原性は弱まり、致死率はさらに低くなるものとみられている。
新型コロナを2類扱いにしたまま、無症状の陽性患者の外出制限や就業制限を続けると、年末にも公共交通機関や宅配便に深刻な打撃が出る可能性がある。
「今年8月、新型コロナの陽性者が相次ぎ、東京都営バスは乗務員が確保できず8路線で一部運休になりました。2類のままで濃厚接触者にも健康観察期間を出勤停止にする措置が続くと、感染者が増えれば年末の繁忙期に交通インフラや流通インフラ、クリスマスや正月商戦にも影響が出かねません」(全国紙記者)
医療現場も3年間混乱が続いている。がんや心臓病で手術を受ける予定だった患者が満足な治療を受けられないでいる。入院や治療前の検査結果でコロナ陽性になると、たとえ無症状でも検査で陰性になるまで手術や抗がん剤治療は無期限に中止。長い場合は半年以上もコロナ陽性反応が出ることがあり、その間、治療はできないままだ。
看護師として筆者が働いていた医療機関では、妊娠中にがんが判明。1歳の子供を育てながら闘病中の30代女性が「この子が成人するまで死ぬわけにはいかない。抗がん剤治療を受けさせてください」と、泣きながら医師にすがっていた。
さらに救急外来も、救急車も破綻寸前で、救命救急隊員は悲鳴を上げているのが現状だ。
「現在、交通事故や火災で119番通報した際、繋がりにくい状態が続いています。『薬を飲んでも喉が痛いのが治らないから来て』『発熱外来がいっぱいだから救急車でどこか連れてって』『自宅療養中だけど一人暮らしだから話し相手になってくれ』といった、モンスター市民からの入電が絶えないからです」