重心がかかとに傾くとどういう結果を招くか。福留にとって逆方向の、レフト方向へ強い打球が飛びません。飛んだとしても狙いどおりの流し打ちではなく、たまたま飛んだ打球です。スイングの軌道自体も狂わせてしまいます。理想は体にバットが巻きつくように回ることですが、彼の場合は体から遠く離れ、いわゆるドアスイングと呼ばれるものになっています。
なぜ、ドアスイングがいけないのか。私はバットの「目」は2つあると考えています。1つはグリップエンドの底の目。もう1つがバットの芯の部分の目です。まずグリップエンドの目で見たボールを、次に芯の目で見るから捉える確率が上がるのです。そしてこの順番を守ると、自然とボールの内側を叩くことができるのでスピンがかかり、打球に飛距離が出ます。福留の場合はグリップエンドの目がボールを見ずに体のほうを向いています。そして、まだ見てはいけない段階で芯の目がボールを見ようとするから確率も下がり、捉えたと思った打球もファウルになったり、フェンス前で失速したりするのです。
オープン戦終盤にも話す機会があり、その時は彼も欠点を把握していました。きちんと右足の親指の付け根に体重が乗るように練習もくふうして取り組んでいたようですが、いざ試合になるとできないのです。バットを振り込んで自分の打撃フォームを作り上げてきた打者です。再生するには、もう一度、積み木を重ねる作業が必要なのです。
頭では理解していても、いざ試合での打席になると、体は勝手に反応してしまいます。もちろん打席の中であれこれフォームを考えていては、投手との対決より自分との対決となってしまい、打てなくて当然。無意識に理想のスイングができるよう、体が感覚を覚えないといけません。そのためには根気強い反復作業が必要となるのです。もっと早く二軍に落としておけば傷口も浅く済んだかもしれません。今となっては焦らせず、少なくとも球宴明け、7月後半くらいまでは時間が必要でしょう。
その間、若手は大きなチャンスとなります。実際に緒方凌介という大卒2年目の選手の出番が増え始めました。体は現役時代の私と同じぐらい小さい左打者ですが、上手に成長すればロイヤルズの青木宣親のような選手になれる魅力を持っています。ベースを踏み忘れるなど、大きなミスもありますが、楽しみな存在です。総合力では上回る伊藤隼太もその争いに加われば、相乗効果が期待できます。若手の経験と福留の再生が8、9月にミックスされれば、チームにとって大きな武器となるのは間違いありません。また、ひたむきに汗を流す福留の姿は二軍の選手に大きな刺激、生きた教材となるはずです。
チームにとっても本当の勝負の時期は、福留と西岡が戻ってからの8月以降です。交流戦は波に乗り切れませんでしたが、大きな連敗もありませんでした。交流戦が終わった段階で最低でも勝率5割をキープできていれば巻き返せると思っていたので、リーグ戦再開に向けては十分な態勢。やはり巨人が首位となり、走り始めましたが、チームも福留も焦らず、まずは足場を固めることが大事です。
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