阿部の一塁転向に伴い、巨人のフロントもしっかり手を打っています。ドラフト1位で、今季63試合に出場した小林は打撃には課題を残すものの、守備的には光るものを見せました。来季は正捕手としてさらなる飛躍を期待しているはずですが、ダメだった場合の保険もかけているのです。それが、ヤクルトからFA宣言した相川です。現在、巨人以外に獲得に名乗りを上げる球団はなく、加入が決定的となっています。来季が39歳のベテラン捕手は球団にとっては、小林のスペアとしてちょうどいい存在のはずです。
今オフは楽天・嶋、西武・炭谷の2人の働き盛りの捕手がFA権利を行使するのではとの報道がありましたが、蓋を開けてみれば両選手とも権利を保有したまま残留が決定しました。兼任監督の谷繁の負担を減らしたかった中日などは誤算だったでしょうが、巨人にとっては大勢には影響がなかったはずです。正捕手・小林に蓋をするような補強はしなかった可能性が高いのです。
ベテランの相川がベンチに控えていれば小林を先発で使いやすいですし、もちろんスタメン起用でもそつなくこなすでしょう。非常にバランスのいい補強と言えます。他球団にとっても相川は、まだまだ攻守に嫌らしい存在です。球界には「優勝チームに名捕手あり」という格言がありますが、巨人は小林と相川のニコイチでその条件を満たすのではないでしょうか。
巨人のリーグ4連覇を阻止しなければいけない阪神のほうはどうか。今年の日本シリーズではソフトバンクの正捕手・細川に差を見せつけられました。来季も鶴岡、藤井のベテランに頼るだけでは、苦しいシーズンとなりそうです。来季が2年目の梅野への期待も大きいのですが、清水、小宮山、岡崎ら中堅も加えて、もう一度完全にフラットな状態で来季の正捕手を見極めるべきだと考えています。
清水は今秋の安芸キャンプでも私に積極的に教えを請いに来るなど、課題の打撃の向上にがむしゃらな姿勢を見せています。今季は開幕捕手を任されながら、終わってみれば26試合の出場でした。来季へかける思いは相当なものがあるはずです。打率1割7厘という屈辱的な数字に終わった打撃は、目に見えてよくなってきています。テークバックの時にグリップを上下させる悪癖を直し、最短距離でボールに当てるバットの角度を身につけ始めました。このまま振り込んでいけば、最低でも2割5分前後は打てるはずです。清水ら中堅の奮起は、イコール戦力補強となるのです。
セ・リーグは2000年代から、ヤクルト・古田、阪神・矢野、中日・谷繁、巨人・阿部という名捕手がしのぎを削ってきました。今は完全に世代交代の時期となりました。広島・会沢、ヤクルト・中村などはバッティングにも力がある若い捕手です。来季は各チームの捕手の活躍が、大きな見どころとなりそうです。
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