物価の上昇が続く中、ユニクロなどを運営するファーストリテイリングが、今年3月から国内の社員の年収を最大40%引き上げることを決定し、大きな話題を呼んでいる。
同社の発表によれば、国内の社員約8400人の年収の水準を数%から最大40%程度に引き上げ、このうち新入社員の初任給は月25万5000円から30万円に、入社1~2年目で就任する新人店長の月給も29万円から39万円に、それぞれ引き上げるという。
だが、松野博一官房長官も「前向きに評価したい」と絶賛した今回の報酬改定には「巧妙なワナ」が仕掛けられているようだ。労働問題に詳しい経済アナリストは、
「問題は、賃上げに『能力や実績に応じて』との条件が付されていることです。つまり、賃上げの対象となるのは、基本的に能力や実績を示すことができた社員とされており、『成果を上げざる者、貰うべからず』というのが今回の報酬改定の内実なのです。その結果、社員は足の引っ張り合いを含めた成果競争に引きずり込まれ、場合によっては賃上げ水準以上の過酷な労働を強いられた上に、成果を上げられなかった社員は居場所を失って転職を余儀なくされるという、成果万能主義の温床になる危険性すらあります」
同様に、新入社員や新人店長らを対象とした賃上げにも、ワナが潜んでいるという。経済アナリストが続ける。
「初任給の水準を引き上げれば、当然、有能な社員が多く集まってくる。そして、有能な新入社員が1~2年目の新人店長を目指してしのぎを削る。つまり、今回の賃上げは入社直後からの過酷な成果競争を助長する報酬改定でもあるのです。まさに『勝つも地獄』『負けるも地獄』のサバイバルレースと言っていいでしょう」
やはり「うまい話にはウラがある」ということか。