夫側に全く身に覚えがなく、妻が妊娠時や妊娠中の性感染症検査で陽性と判定された場合、産婦人科の診察室が修羅場と化すのは、エイズも同じである。
妊婦がエイズに感染し、感染に気づかないまま出産した場合の、母子感染率は約30%。妊娠初期に服薬や帝王切開などの適切な対策(出産後の人工授乳=母乳を与えないなども含む)を講じた場合の母子感染率は、1%以下とされている。
対して、前回紹介した梅毒の場合(2月24日公開記事)、治療を受けた際の母子感染確率(胎児が先天梅毒を持って生まれてくる確率)は約40%、そうでない場合は約14%。したがって、ここ数年の女性の梅毒感染者数の急増ぶり、とりわけ20歳代女性の梅毒感染者数の異常な激増ぶりも含め、妊婦がエイズ陽性と判定された際の衝撃度は梅毒ほどではない、とも言われている。
だが、梅毒が早期治療によって完治を得られるのに対し、エイズには発症を抑え込む対症療法しか存在しない。長年、妊婦と性感染症の問題に取り組んできた産婦人科医も、
「エイズへの感染が判明したその瞬間から、一生涯、妊婦は不治の病を抱え続けることになる。この点は、完治が期待できるその他の性感染症との大きな違いであり、とりわけ身に覚えのない夫に妻からのエイズ感染が判明した場合、夫が受けるショックは間違いなく最大級のものになります」
それだけではない。妊婦のエイズ陽性判明は、夫婦関係を崩壊に追い込みかねないインパクトを持っているのだ。産婦人科医が続ける。
「問題となるのは『どのようにしてエイズに感染したか』です。エイズはコンドームをつけない性行為によっても感染しますが、最も危険なのは、コンドームをつけない『後ろの穴』でのプレイなど、交合部の出血による血液の接触をともなう性行為です。実際、妻の感染判明後、そのことに気づいた夫が絶句。その後、診察室で激高し、『お前は別の男とそんなヤバイことをしていたのか!』などと喚いて、妻を激しく責め立てたこともありました」
エイズ判明で白日のもとに晒される、不貞妻の知られざる「激ヤバ性癖」。まさに目を覆いたくなるような修羅場である。