号泣さえしなければ、辞職願など出さずに済んだのに──。今頃、野々村竜太郎元議員は、後悔の念に駆られていることだろう。それほど、地方議員の生活はパラダイスなのだ。何せ税金を吸い尽くしながら、誰にもとがめられず「やりたい放題」なのだから‥‥。
年間195回の日帰り出張、兵庫県の野々村竜太郎元県議が問題視されたのは、その出張費用を賄っていた政務活動費である。その全額が税金から支払われているものだ。政治評論家の有馬晴海氏が解説する。
「12年に地方自治法が改正され、それまでの政務調査費が政務活動費という名前に変わりました。同時に使途名目が広がり、政策立案のための研究調査だけでなく、事務所費などの政務活動全般に使えるようになったのです。その金額は自治体がそれぞれ上限を決めることになっています」
全地方議員の中で、最も多くの政活費を受け取っているのが東京都議。なんと月60万円である。もちろん、歳費(給料)は別途支払われている。おまけに都議の場合、議会に出席するだけで“交通費”として1万円までついてくる。
では、野々村氏はどうかといえば、月50万円。全国でもトップレベルの“政活費長者”だったのである。
政治アナリストの伊藤惇夫氏が政活費の問題点をこう指摘する。
「政活費は原則、前払いです。使った分を差し引いて、残額を返還することもできるのですが、役所が年度末に予算を使い切るために道路を掘り起こしている風景でもわかるように、もらった金は使い切りたくなるのが人の情でもあります。『第二の歳費』として批判されるのもこの点にあります。この支払い方法も含めた制度の見直しが必要です」
ちなみに、野々村氏の歳費は月約90万円。政活費を含めれば、年収約1500万円となる。1期4年の任期中に、婚活に精を出して何もしなくても、6000万円は稼げたのである。会見で号泣するのも無理はない。奇声で主張は聞き取れなかったが、恐らく「給料以外に月50万円ですよ。それだけで、そのへんの会社員の給料より上。それだけで生活できるんですから、カラ出張もしたくなりますよ。わ~ん」とでも言いたかったのだろう。
しかし、野々村氏ごときは氷山の一角にすぎない。
政治部デスクが言う。
「かつて政調費の景気調査名目でキャバクラに行く、書籍代の中にエロ本まで入っていたなんてことはザラにありました。野々村氏の問題発覚後にも、海老名市議が政活費で江戸時代のエロ本を買っていたことが露呈。愛知県議にいたっては、知人女性に海外視察を依頼し、政活費から渡航費を渡していた。また、秋田県議は政活費でメロン50個を購入するなど、あきれるばかりです」
何より、野々村氏を追及する兵庫県議の中にも、政活費で大量の切手を購入していた人がいたのだから、幕引きを早めたかったのも当然だろう。