政活費に強欲な地方議員が多い背景には、ある“風潮”が存在するという。
「世襲議員への批判が高まり、普通の人が議員になりたがるという風潮がありますが、中には人生の一発逆転を賭けて選挙に出馬するような人がいて、幸運にも当選してしまうケースがある。勉強も足りないまま先生と呼ばれて多額の報酬を受け取り、勘違いしてしまう。野々村氏もそんな事例の一つに思えてなりません」(有馬氏)
地方選挙では候補者の減少が続いている。野々村氏が当選した11年の統一地方選は候補者が過去最低を記録。総定数2330人に対し候補者は3457人と、半数以上が当選したことになる。人生の一発逆転を賭ける割りには、倍率は低いのである。
しかし、起死回生を図る若手ばかりが問題なのではない。ベテラン地方議員も同様なのである。
多くの自治体の地方政治を取材してきたジャーナリストの横田一氏が話す。
「自民党系の地方議員に多いのですが、ベテランになると選挙を支援する業界団体をしっかり手中に収めている。そのため、地元の国会議員でさえ、そうしたベテラン地方議員に頭を下げなければ選挙に勝てない。保守系が強い地区では、国会議員より偉そうにふるまう地方議員も多いです」
そんなプチ権力者を数多く見てきた横田氏が忘れられないのが、中部地方某県のX県議だ。
「知事が議場で発言しているのに、X県議だけ机の上に資料を出していない。それもそのはずで、X県議は議会中ずっと腕組みして居眠りをしていたのです。知事の話など聞く必要もないという態度なのですが、注意できるような同期議員は皆、亡くなっています。そのため、X県議に権限が集中し、県議選の公認権も持っている。この県は1人区が多く、X県議にたてつけば、公認がもらえないだけでなく、確実に対抗馬も立てられる。実際にX県議の恨みを買い、落選した議員もいました」(前出・横田氏)
まさに恐怖政治を敷く豪族のような存在なのだ。そんなX県議だが、まつりごとには関心が低いようで、
「連続10期以上、当選しているX県議ですが、政策を立案したことはほぼ皆無だそうです。ただ1度だけ、ある条例案を成立させようと必死になったことがありました。それは、県の出納を預かる指定金融機関を変えるためで、みごとにX県議の地盤にある銀行が指定金融機関の座を奪ったのです」(前出・横田氏)
地元企業への便宜供与が疑われたX県議である。当然、裏金の噂も絶えない。地元の企業経営者以上の報酬をもらい、唯一の仕事場である議会で居眠り‥‥。地方議員は楽園でウカれているかのようだ。