V奪還を至上命題とする巨人・原辰徳監督にとって、現役時代の忘れられない事件といえば、あの「代打・一茂」が真っ先に挙げられるのではないか。
94年9月7日の横浜戦、7回。打順が4番・原の場面で、長嶋茂雄監督がベンチから飛び出し、球審に「代打、長嶋一茂」を告げたのである。
この屈辱を、原監督は当時、どう思っていたのか。3月5日、野球解説者の高木豊氏が自身のYouTubeチャンネル〈高木豊Takagi Yutaka〉で原監督を直撃したところ、
「あの当時、ミスターはチームが勝つためにどうするかっていうことだけですから。『あ~、オレ野球ヘタクソになったな。よし、もうちょいうまくなってやるぞ』っていうふうに思うしかないわけでね」
この優等生的発言に、高木氏は畳みかけるように質問する。
「当時、その時も思った? 監督は素直に?」
するとここで初めて、原監督は本音を漏らすのだった。
「最初は、『え~、一茂~?』っていうのはね、思いましたけどね…」
つまり原監督は、あの場面は自分が決めるべきであったとして、もう一度うまくなるべく練習に励んだと回顧しているのだ。
94年の原監督は67試合に出場して、打点36は自己ワースト。本塁打も14にとどまり、翌95年に現役を退いている。
一方の一茂は、どんな感想を抱いたのか。これは昨年12月17日、槙原寛己氏のYouTubeチャンネル〈ミスターパーフェクト槙原〉に出演した際に、次のように回想していた。
「オレも参ったよ。頼むから出さないでくれって思ったもん」
結果、サードゴロに倒れ、ミスターの勝つための算段も虚しく、1対2で敗戦したのだった。
(所ひで/ユーチューブライター)