歴史は繰り返すのか。大谷翔平の超人的な打撃でさらにヒートアップする野球界を、サッカー関係者は苦々しい思いで眺めている。
長年、サッカー日本代表を取材してきたベテランのサッカーライターは、次のように現状を口にする。
「昨年のカタールW杯で、日本代表はドイツ、スペインという強豪国を撃破し、決勝トーナメントに進出した。あれには日本中が沸きましたね。森保一監督やブラボー長友佑都らはテレビに出まくり、久々のサッカーバブル到来でした。ところがJリーグが開幕したというのに、スポーツニュースはWBCの話題ばかりですからね。サッカー協会の田嶋幸三会長以下、関係者はあまりいい気分はしていない」
日本代表・森保監督の続投が決定。今後はアメリカ、カナダ、メキシコで3カ国共催する2026年W杯に向けてスタートを切る。すでに3月24日にウルグアイと、28日にはコロンビアと「キリンチャレンジカップ」で対戦することになっている。
だが今回、最強と言われる侍ジャパンが順調に勝ち進めば、マイアミで行われる決勝戦は、日本時間3月22日。世界一を奪回すれば、第2次森保ジャパン船出の話題は、侍フィーバーの真っ只中で埋没することになりかねない。
「前回、決勝トーナメントに進出したロシア大会の時も、盛り上がったのは大会終了直後だけですからね。人気が長く続かない。ネット放送はありましたが、カタールW杯アジア最終予選のオーストラリア戦は、地上波の放送もなかった。サッカー界としては、前回の二の舞いは避けたいところでしょう」(スポーツ紙サッカー担当デスク)
侍ジャパンが中国と戦うWBC初戦(3月9日・東京ドーム)では、日本代表の森保監督が始球式を務めることが決定している。だが今のところ、さほど大きな話題にはなっていない。
「侍ジャパン初戦の先発は、大谷翔平が有力視されています。現在の盛り上がりぶりなら、試合前の歓声は先発投手に向けられる。森保監督としては、冷静に投げられる雰囲気にはならない気がします。気の毒ですね」(前出・サッカーライター)
世界規模で比べれば、サッカーは競技人口、ファンの数ともに、野球をはるかにしのいでいる。いくら大谷が参加するWBCとはいえ、サッカー関係者が嫉妬し、危機感を募らせるのは無理もないことだろう。
(阿部勝彦)