カタール・FIFAワールドカップ2022が11月20日についに開幕! 森保一監督率いる日本代表26人はドイツ、コスタリカ、スペインと予選リーグを戦う。日本にとっては“死のグループ”とも言われる、強豪国揃いのグループEでの戦い方から注目選手まで、サッカー識者たちが詳しく解説する!
ワールドカップ開幕を前に、イギリスのブックメーカーでは、日本を含め、どのチームが決勝トーナメントに進出するかの予想が盛り上がりを見せている。最大のブックメーカーの一つである「ウイリアム・ヒル」でも、各グループの勝者が予想されている。日本が戦う「グループE」では、首位通過の予想オッズでスペインが0.83倍、ドイツが1.1倍なのに対して、日本は12倍と大きな差が開いている(数字は本稿執筆時点)。
「サッカーマガジン」元編集長でサッカージャーナリストの大住良之氏は「これまでの実績やサッカー界でのイメージを考えると、こういう見方になるのは仕方ないですね」と苦笑するが、確かに今回の対戦国は強豪ばかり。
ドイツは西ドイツ時代を含めるとワールドカップで優勝4回、準優勝4回、決勝戦に8回進出した経験がある。スペインは優勝こそ1回だけだが、世界最強の国内リーグを抱えるサッカー大国。代表チームも21年の欧州選手権4強、欧州ネーションズリーグ準優勝と安定した力を示している。比較的くみしやすいと言われているコスタリカも、2014年大会で8強入りした実績を持つ。
「国際的には、スペイン、ドイツで決まりの“鉄板グループ”と見られています。それゆえ、この2チームに油断が生じることもありえます。サッカーという競技は力の差がそのまま結果に表れるとは限らない。そこに希望を持ちたいですね」(大住氏)
厳しい戦いの中で僅かな光明を見出すしかないと指摘するのは大住氏だけではない。1974年のドイツ大会以来、ワールドカップを観戦・取材し続けてきたフットボールジャーナリストの後藤健生氏がこう話す。
「前回大会のグループリーグで対戦したコロンビア、セネガル、ポーランドと比べて明らかにレベルが違う。決勝トーナメント進出の可能性を問われれば、せいぜい30%といったところでしょう。ただ、初の中東開催である点は日本にとって有利です。カタールは同じアジア地域なので何度も試合をしたことがある。欧州や北中米のチームよりはホームの感覚を持てるはずです」
森保ジャパンを精力的に取材し続けているサッカージャーナリストの安藤隆人氏も、メンバー発表後に故障者が続出していることを憂慮し、かなり難しい戦いになると見立てる。
「中山雄太が欠場となったのはけっこう痛手です。ユーティリティープレーヤーで、守備だったらどのポジションもできる選手。サイズもあるので、サイドバックに彼と伊藤洋輝(23)がいれば安心できると思われていたのに1人欠けてしまった。加えて同じDFの冨安健洋(24)が右脚を負傷、MFの遠藤航(29)が脳震盪で初戦のドイツ戦に間に合うか微妙な状況になってしまった。彼らは主軸中の主軸なので、いるといないのとでは大違い。冨安と遠藤が出られなければ決勝トーナメント進出の可能性は15%程度と言わざるをえません」
どうやら困難な状況が待ち受けているのは間違いなさそうだが、そこを打破して勝ち抜くためには、どう戦えばいいのか。大住氏は次のように話す。
「森保一監督(54)は、今年9月の試合からシステムを少し変更しました。それまで4-3-3という中盤とFWに3人ずつ配置する形だったのを、4-2-3-1というフォーメーションに変えた。ワールドカップ本戦を想定してのことです」
ドイツ戦、スペイン戦では、相手にボールを持たれ守りに時間を割くことも考えられる。そうなると、全体として自陣に引き気味で戦うことを余儀なくされるが、4-3-3システムだと両サイドのFWまでが引いてしまう。これでは1人のFWが孤立してしまい、ボールを奪った時の攻撃が苦しくなる。FWのすぐ後ろに「トップ下」と呼ばれる選手を置く4-2-3-1だと、その不安が解消されると言う。
「トップ下での起用が予想される鎌田大地(26)は現在すごく調子がいい。彼がうまく機能してくれれば、守備がしっかりした上で攻撃の手数も増えるはずです」
後藤氏は初戦のドイツ戦が非常に重要と断言する。
「よく初戦が大事と言われますが、必ずしもそうではありません。2010年大会優勝のスペインは初戦を落としているし、2014年大会で日本と同組だったギリシャは、2戦終了時点で1敗1分からグループリーグを突破した。そういう例は他にも少なくない。ただし、今回の日本にとっては、初戦に全てを賭けるべき。スペイン戦よりもドイツ戦のほうが勝つ確率はあります」
今年9月の欧州ネーションズリーグで、ドイツはホームでハンガリーに負け、アウェーでイングランドと引き分けた。
「2戦とも試合の出来は悪かった。それから2カ月間、代表チームの活動はしていない。急に改善するのは難しいと思われます」
初戦の重要性については、安藤氏も同意して、
「日本などはグループリーグ突破に照準を合わせますが、ドイツのような強国は、最終目標である決勝戦から逆算して尻上がりに調子を上げていく考えです。そういうチームを叩くには、初戦が最大のチャンスとなります」
今大会は開催地が中東であることに加え、冬に行われるのも史上初の歴史的な大会と言われている。果たして日本サッカーにとって「歴史的な」結果となる8強進出が実現するのか。運命のキックオフは日本時間23日午後10時に迫っている。