昨年11月14日から、東京23区及び三鷹・武蔵野地区のタクシー料金が14%も値上げしたが、「ちょっと待て」と国を訴えた審理が始まっている。
裁判に訴えたのは、都内の「ロイヤルリムジン」と「ジャパンプレミアム」の2つのタクシー会社だ。初乗り料金が420円から500円になり、加算額も「233メートルごとに80円」から「255メートルごとに100円」と高騰した。
ちなみに「ロイヤルリムジン」は予約客がほとんどで、「アルファード」の高級車種が使用されている。「物価高に便乗する値上げは、お客さんの理解を得られない」というのが、反対の理由だという。
訴えた2社は国交省の通達に従わなかったため、監督官庁の関東運輸局に対し「処分はしないで下さい」との要望を出している。許認可を必要とするタクシー業界では「お上の言うことがごもっとも」であり、逆らうことはまずできない。あとでどんな仕打ちがあるのか戦々恐々とするのが常であり、今回の行為はもっと国民の間に共有されるべき大英断だ。
「そもそもタクシー業界も不況なので、それで値上げをすれば客足は遠のく、という2社の言い分は筋が通ったものです。訴状には『現在は値上げの環境にない』『国が値上げを指示するのは裁量権の逸脱である』とまで踏み込んでいます。これは画期的で、監督官庁に対してここまで言い切るのは大変だったのでないかと想像します。しかし、国にもメンツがあるので、徹底抗戦することになるでしょうが、タクシー会社側に世論がつけば、どうなるか分からなくなる。ここはマスコミが大きく報じるべきなのかと思いますが」(司法担当記者)
そもそもタクシー業界が不透明なのは、昔から言われていることだ。なんだかんだと言って値上げをしてきたが、国とタクシー経営者との深いつながりによって、タクシー運転手の労働改善にまつわる言い訳を弄してきた。
「結局、タクシー運転手の収入アップは雀の涙だけで、甘い汁を経営者が吸う形態は、何も変わっていません。運転手の高齢化が進み、平均年齢が70歳ほどという地域もあります。今回の値上げ反対の訴訟は今後、許認可の裁量を持つ役所に対し、正々堂々と異論を言える、正しい民主主義が始まる一歩となればいいと思います」(タクシー業界関係者)
明治時代から庶民は役所のことを「お上」と呼び続けているが、もう「お上」感覚から抜けなければならない時代になっているのだ。タクシー会社にはぜひ裁判で頑張ってほしい、と思う人は少なくなかろう。