熾烈な競争が続く大阪のタクシー業界では、ここにきて次々とトラブルが噴出。暴力団員をかたる“裏タクシー”までが公然と走るほどの悪質運転手があとを絶たないのだ。
関西のタクシー業界には、公然としたタブーがまかり通っている。その最たるものが、大阪国際空港(伊丹空港)ターミナル内のタクシー乗り場だという。
空港に出入りしているタクシー運転手が告発する。
「あの場所は大手タクシー会社Xの“縄張”みたいになっとる。あいつらの手口は乗り場に無許可で勝手に看板を立てて、長距離の客だけを見繕って乗せていくんや。完全な違法行為や」
自作看板には「長距離の方はこちら」とタクシーの遠距離客を誘導する文言が書いてあり、空港のポーター(タクシーの運搬役)さえもこの違法行為に従って、短距離で降りる客をX社以外の別のタクシーに振り分けているという。
実は、X社の運転手は空港のポーターを抱え込んでグルになっているのが実情なのだ。
「あいつらポーターに飲み物おごったり飯代を出したりしとった。それで手なずけて、客の割りふりをあいつらの有利になるようにしてるんや」(50代の運転手)
それだけではない。この件で陸運局に申し入れを行ったタクシー業界の労働組合員も憤りを隠さない。
「X社の運転手は自分たちの利益を守るために排除行為を行っていました。自分たちの知らないタクシーや他社のドライバーに対して、恫喝を行って空港から追い出していたんです。こうした悪質ドライバーは月に120万円も荒稼ぎしとったんですわ」
行きすぎた他社の運転手の排除行為に対し、この男性は陸運局に申し入れをしたが、明確な回答は得られなかったという。しかし、排除行為に業を煮やした一部ドライバーたちが“縄張”に入ると、X社の悪質ドライバーが威嚇する。
「暴力団の名前をあげて『ワシのバックは○○組や』と恫喝してきた」(前出・50代運転手)
だが、あまりにも悪質な違法行為に、多くのドライバーが反旗をひるがえした結果、ようやく事態は沈静化したというが、いまだに空港の客の選別は公然と行われ、違法行為が常態化しているという。
「陸運局に問い合わせても『タクシー協会に権限があるので‥‥』と言葉を濁してラチがあかない」(前出・組合員)
まだまだ小競り合いは続きそうだ。
一方、全国一安いというタクシー料金を巡って一悶着起きているのが、大阪の繁華街に出没する“白タク”の存在だ。
「主なお客さんがホステスで、クラブやラウンジといったお店から直接請け負って送迎する白タク組織がある。ワンコインタクシーが一時期話題になりましたが、それよりも安いから値段の勝負になれば負ける」(別の50代の運転手)
大阪にはいくつかの白タク組織があり、料金も通常の半値程度。北新地でいえば深夜0時過ぎにアメリカ領事館界隈にズラリと並んでいる乗用車がソレで、月極で依頼するお店もある。
白タクは法律違反であるうえ、乗客に対する保険にも当然加入していない。交通事故にあっても、白タクだと判明すれば対人賠償保険は適用されず、クラブのママらはそれを危惧しているという。
関西には約2万台のタクシーが登録されているのに対し、近畿陸運局はわずか数十人程度の組織で管轄する。
「この人数では、全ての違法行為に注視できない。しかも、地方の局長は東京からの出向で事なかれ主義。課長クラスでも大手タクシー会社に抱き込まれており、お目こぼし状態なんです」(前出・組合員)
労働環境が劣悪で虚偽の申請を労働基準局に提出する会社すらある。タクシー業界の闇は深いのだ。