開局以来、最大級の人事異動がフジテレビで断行された。6月27日付で異動したのは約1000人。全社員約1500人の3分の2というから、尋常ではない。いったい何があったのか。
7月11日の定例会見で亀山千広社長が語ったのは、「一にも二にも、社内の活性化と視聴率の奪還のための異動」
00年代は全日、ゴールデンタイム、プライムタイムの3冠を独占していたフジテレビが、ここ数年は日本テレビ、テレビ朝日の後塵を拝する低迷を続けている。そこに大ナタを振り下ろしたのだ。名物プロデューサーと言われる人たちも複数、異動になったという。フジテレビ中堅社員が言う。
「例えば、FNS歌謡祭を仕切っていたチーフプロデューサーが、CSの制作に異動。でも視聴率を取れなかった人ではありません。世代交代ですよ。ずっと同じところでやっていると、人間関係がナアナアになる。バラエティやドラマ、音楽部門は事務所との癒着、ブッキングのやり取りが深く根を張り、番組の質の低下につながってしまったとの指摘がありますが、一理あるでしょうね」
とはいえ、大物プロデューサーが動いたことで、
「居酒屋で『FNS歌謡祭が失敗しても知らんぞ!』と叫んだ社員がいました」(ベテラン制作スタッフ)
一貫して制作畑を歩いてきたものの、営業部門に異動になった元プロデューサーも、
「視聴率浮上の兆しがないことを憂いてはいました。だから周囲も、この現状では(大異動が)しかたないことと受け入れる雰囲気になっています。しかし、この年でまた勉強するとは思わなかった‥‥」
アナウンサーも例外ではない。主にニュース、報道番組を担当してきた大ベテラン、田代尚子元アナ(48)が国際局へ。フジの番組を海外に流す交渉をする部署だという。
この大異動の「キモ」を、先の中堅社員はこう解説する。
「社内的にいちばん激震が走ったのは、編成局がほぼ解体されたこと。主だった人が軒並み飛ばされたんです。編成はテレビ局の心臓部であり、どの時間帯にどういう番組を放送するかを決定し、数字の責任を取るところ。バラエティの部長、ドラマの部長が交代し、人数も減らした。一方で、昔活躍した人を多々、戻したりもしている。これは世代交代と逆行することで、理解できませんが」
亀山社長の意図は「編成部門を縮小、制作部門への配置を厚くして、機動力を生かす」ことにあるという。
解体されたとまで言われる編成において「生き残った」のは、かつてトレンディドラマの大ヒット作を連発したO常務である。中堅社員が続ける。
「常務兼編成・制作局長で、事実上の編成トップでした。今回の大異動でO氏に仕えた部下がほぼ全員、尻尾を切られる中、O氏は編成局長は外れましたが、事実上、編成を担当する常務として生き残った。このO氏の生き残りで、短期的には新たなスタッフによるドラマで数字を取り、中長期的にはバラエティで数字を取る。そして報道と情報番組で信頼を得る。そういう編成方針になったのです。視聴率低迷の一番の原因はドラマにあると分析しているからです」
その方針を象徴するかのように、尾野真千子主演の前作「極悪がんぼ」が「月9」史上最低視聴率7.8%を記録した現実を払拭すべく、木村拓哉と北川景子を配した「HERO」で勝負をかけ、初回視聴率26.5%と大きく盛り返した。ところが──。
「ずっとドラマばかりをやってきたベテラン、45歳以上の中堅、ゼネラルディレクター、ゼネラルプロデューサーという肩書の幹部社員はつぶしが利かないというか、引き取り先が他にない。では、A級戦犯たる彼らはどうなるのか。ドラマ制作部門にとどまって飼い殺しですよ。会社でDVDを見て研究をする、という事実上の閑職に追いやられる。彼らは早くも悲鳴を上げていますよ。ドラマには他に若い人材がいっぱいいますからね」(前出・ベテラン制作スタッフ)
将来に光が見えない閑職幹部は、「やってられない」「こんなことなら辞めてやる」といきまいているという。
「ジタバタするのはカッコ悪いからみんなの前では平静を装っているけど、陰で嘆いている社員はいっぱいいますよ」(前出・中堅社員)
阿鼻叫喚のテコ入れが正解か否かは、やがて数字が判断してくれるのだろう。