夏に比べれば人気はイマイチだが、春の甲子園もなんだかんだといっても見てしまう。
今年も3月18日から試合が始まった。コロナ禍の影響で4年間できなかった声援や演奏が許可されて、賑やかな甲子園が戻ってきた。やはり声援とブラバンの演奏は必要だということを再認識した。
各高校のブラスバンドが何を演奏するのかも楽しみである。定番の「アフリカンシンフォニー」や「ジョックロック」、そしてX JAPANの「紅」や大塚愛の「さくらんぼ」、「日曜日よりの使者」など数多くの曲が演奏されるが、山本リンダの「狙いうち」は1973年にリリースされているから、今年で満50年ということになる。
それだけでなく、ピンク・レディーの「サウスポー」も1978年発売ゆえ、45年前の曲だ。Queenの「We Will Rock You」も1977年の発売。「紅」でさえ1989年だから、軽く30年以上は経っている。
楽譜を用意して演奏練習をしなければならないから、古い曲が選ばれるのも仕方がないことだろう。ところが、である。今から10年前の2013年の夏の甲子園大会では、どこの高校なのかは忘れてしまったが、聞き覚えのある曲が流れてきたので驚いた。
それはこの年の4月から9月まで放送されたNHK朝の連ドラ「あまちゃん」のテーマ曲だった。大友良英作曲のテンポのいい速めの曲調は、心地よくウキウキするような高揚感を覚える。わずか3カ月強の間にその曲を練習して披露するのはいかに大変だったかを想像すると、高校生の能力に頭が下がる思いだった。
関西で吹奏楽部の顧問をしている女性教員に、甲子園での演奏について聞いた。
「私は甲子園では、ブラスバンドの上手な演奏を聴く目的もあるんです。出場校をチェックして、録画し、繰り返し応援の演奏をチェックします。今回のセンバツ出場校であれば、大阪桐蔭と智辯和歌山、そして東海大菅生が秀逸ではないでしょうか。全国大会で金賞受賞の常連校である大阪桐蔭は、ブラスバンドをやるために遠くから入学してくる子もいてレベルは相当高く、それを聴くためだけに甲子園に行ったこともあります。今回は出場しませんが、千葉の習志野高校も、聴くために行ってもいいレベルだと思います」
大阪桐蔭は学校に立派なホールを持ち、恵まれた環境にある。
「大阪桐蔭の高校生だった藤浪晋太郎がドラフト1位指名を阪神から受けた時、学校に取材に行きましたが、中庭で藤浪が記者会見を終えると、サプライズで吹奏楽部が演奏したのを聴いて、その迫力と上手さに感動しました」(スポーツ紙記者)
さて、今年の応援にはどんな曲が流れているのか。
(深山渓)