貧困国への開発援助が目的のODA(政府開発援助)。今年その政策が大幅に見直される予定だ。驚くのは経済大国となった中国にいまだに渡されている事実だろう。
外務省が設けた有識者懇談会が、ODA政策の大幅見直しのための報告書を岸田文雄外務大臣(56)に提出したのは、6月26日のことだった。
政治部記者が解説する。
「この報告書を参考にしながら、外務省は『ODA』の基本理念を示す新大綱を今年中に発表する予定です。賛否はありますが、使い方しだいでは日本との関係を強化する有効な外交カードになります」
大綱は92年に初めて作られ、透明性を高めるために03年に改定された。
11年ぶりの改定に向けた報告書にはODAのあり方として、「戦略性を高める必要がある」と強調されている。ODA予算は97年の11兆円をピークに減少し、13年度には約半分の5兆5000億円となった。しかし、消費税増税や、ガソリン価格や電気代といった基礎生活費の高騰で、国民の生活は一向に上向く気配が見えていない。
「この状況にもかかわらず、中国にODAが支払われていました。10年にGDPで日本を抜き、世界第2位の経済大国となった中国にお金を渡す意義が問われています」(前出・政治部記者)
79年の対中ODA供与開始から、日本は中国にお金を「献上」し続けてきた。その一つが円借款と呼ばれる資金協力だ。これまでの合計は3兆3164億円にも上っている。
「わかりやすくいうと円借款とは低金利の貸付です。中国国内の大型インフラ整備に投下されました。中国が拒否しないかぎり、いずれ日本に返済されます」(前出・政治部記者)
JCIA(国際協力機構)によれば、12年末段階での中国への円借款の残高は約1兆6000億円。返済は確実に進んでいるようだ。
これらが中国に与えた影響を、「なぜ中国人にはもう1%も未来がないのか」(小社刊)の著者で評論家の石平(せき・へい)氏が語る。
「中国政府は経済成長のためにインフラ整備を行い、円借款の一部がそこに使われたことは事実です。79年までに中国に高速道路はありませんでしたが、建設に円借款は大きな役割を果たして、中国経済成長の基盤作りに大きく貢献してきました」
13年度の外務省「ODA白書」では、中国への資金提供をこう自画自賛している。
〈アジア太平洋の安定にも貢献し、ひいては日本企業の中国における投資環境の改善や日中の民間経済関係の進展にも大きく寄与(略)胡錦濤中国国家主席(当時)が心からの感謝を表明するなど、中国側も様々な機会に日本の対中ODAに対して高い評価と感謝の意を表明してきました〉
しかし、尖閣諸島や南沙諸島での中国の動きや、いまだ多くの中国人たちの強烈な反日感情を考えれば、外務省の主張はまったく的外れな結果になっていると言えよう。