3月24日に放送された「スッキリ」(日本テレビ系)で、お笑いコンビ・オードリーの春日俊彰がロケで訪れた栃木県の「那須どうぶつ王国」で、ペンギンの餌やりを体験した際に、ペンギンのいる池にわざと落下。これがペンギンを危険な目に遭わせたとして、波紋を広げている。
「那須どうぶつ王国」は当日、公式ツイッターに「本日のテレビ中継について」と題した文書を発信。中継について「事前打合せには無かった状況で、タレントの方が、ペンギンのいる池に入るシーンが放送されました。当園としては誠に遺憾であり、テレビ局側に厳重に抗議いたしました」と報告している。
週が明け、3月27日の同番組の冒頭で、森圭介アナは「動物がいない池に(出演者が)入る可能性については打ち合わせをしていましたが、本番では動物への安全性や衛生面への配慮が不足した、危険な放送となりました」と謝罪した。
続けて24日の放送で春日を煽り、池に落ちるよう誘導した形のMC・加藤浩次も経緯を説明。スタッフと「那須どうぶつ王国」の事前打ち合わせで「池に落ちてもいいですか。こういうロケだったら、こういうことがあるんですよ」と話していたと明かした。同時に、どうぶつ王国から「動物に危害が加わらなければ池に落ちても大丈夫ですよ」と、池に動物がいない状態ならばOKということで双方が納得していた、と説明した。
加藤は、自らが当日しっかり打ち合わせをすることを怠ってしまったと反省し、スタッフとしっかり話ができていれば、今回のような事態は防げていたと悔やんだのである。その上で、春日を池に落ちなければならない事態に追い込んでしまったと反省。不快な思いをさせてしまった「那須どうぶつ王国」と視聴者に謝罪した。テレビ関係者が言う。
「スタッフと園側は、ペンギンのいない池に落ちるのであればOKというすりあわせをしていたということですが、加藤がしっかり打ち合わせ内容を把握していなかったことが、今回の問題を引き起こした原因と言えそうです。しかし、本番で加藤はロケの映像を見ながら春日と話しているわけで、池には餌を求めて群がるペンギンが大勢いたことも把握できている。それでも春日が落ちるように仕向けたのは、打ち合わせができてなかったから、で片付けていいはずはない。春日が落ちたシーンでは、岩田絵里奈アナも『絶対ダメ!』と言いながら爆笑していましたからね。そもそもあのシーンが動物にとって危険であるという認識を持っていなかったことは明白」
日本動物園水族館協会(日動水)は3月27日、今回の問題について声明を発表。日動水がメディアに協力するのは「広く人々に動物たちや命の大切さを知り学んでいただき、さらに生物多様性や地球環境の保全にも関心を向けていただくことを望んでいるから」とし、今回の番組については「そのような目的に合致したものとはとても思えません。動物園の動物に対する安全面や衛生面への配慮が欠落しており、現在、日動水が積極的に取り組んでいるアニマルウエルフェア(動物福祉)にも反していると感じられるからです」と指摘した。
その上で「笑いやバラエティーは人間社会にとって必要なものでしょう。しかし、動物に対する敬いの気持ちを忘れて単に笑いの対象とするような行為は日動水として認められないものです。上述した動物への多様な配慮がなされていない番組制作に積極的な協力を行う意思は、これまでも今後も日動水ならびに日動水加盟園館にありません」と、厳しい言葉を並べた。
視聴者からも「動物園や水族館の楽しさを伝えるロケでお笑い要素はいらんでしょ」といった厳しい意見が殺到している。
制作スタッフは、今一度、番組作りの意義を根本から考え直した方がよさそうだ。
(石見剣)